坊主頭での退院「ママじゃない!」と涙と笑顔で

── 周囲もとまどっていたのですね。1か月の自家移植入院から、自宅に戻ったときのことを教えてください。

 

えみりィーさん:平日の昼間に退院したので、子どもたちはまだ家に帰ってきていませんでした。当時は抗がん剤により脱毛が進んで、中途半端に毛が残っている状態でした。脱毛には個人差があって、あまり抜けない人もいるそうですが、私は落ち武者みたいな感じだったので、子どもたちが帰宅する前に思いきって夫にバリカンで丸坊主にしてもらいました。

 

えみりィー
1か月間無菌室で過ごしたえみりィーさん

── ご主人はどんな様子で、えみりィーさんを丸坊主に?

 

えみりィーさん:びっくりして「え、俺がやるの!?」という感じでした。でも、長男が剣道部なので、夫がいつもバリカンで丸坊主にしており、慣れていました。心の中ではいろいろ考えたとは思いますが、また生えてくるわけですから、楽しそうに、はしゃぎながら刈ってくれましたよ。

 

── ご主人、かなり前向きですね!

 

えみりィーさん:無菌室で髪が抜け始めたときに、誰かに泣きすがりたかったけど誰もいなかったので、とりあえず夫に電話したんです。「やっぱり抜けちゃったよ~」と言ったら、夫が「お前は抜けても生えてくるけど、俺たちは抜けたらもう生えてこない!」って言ってくれて、ちょっと励まされたんですよね。自分の頭の形を見るのもなかなかない経験で、新鮮でしたよ。

 

── 丸坊主のえみりィーさんを見た子どもたちは?

 

えみりィーさん:帰宅した子どもたちとは、ウィッグをつけて会いました。入院中はニット帽をかぶっていたので、子どもたちは私の髪が抜けたことを知らなかったんです。子どもたちが「ただいまー!」と走り寄ってきて、「こうなったよ!」とウィッグをはずしたら、年長の女の子は「ママじゃない!」って、泣いちゃいました。2歳の子は頭が取れたと思って、どこかを探し始めて「ない、ない!」って(笑)。でも、「これは強いお薬で髪が抜けちゃったけど、強い薬を使ったから家に帰ってこられたんだよ」と説明したらわかってくれました。長男と同じ坊主頭になることもなかなかないので、2人で写真を撮りました。

 

── 2人とも、きれいな坊主頭ですね!入院中や退院直後の写真のえみりィーさんは、眉毛がりりしく、目元がゴージャスです。

 

えみりィーさん:抗がん剤を使っても、眉毛とまつ毛は抜けなかったんですよ。腕の毛や鼻毛は全部抜けたんですが、個人差があるそうです。入院前にまつ毛エクステをしたのがそのまま残りました。

 

── 入院中もオシャレをしていたんですね。楽しみにしていたウィッグですが、いくつくらいお持ちでしたか?

 

えみりィーさん:知り合いから2個もらって、全部で6個です。外巻き、みつあみセット、前髪パッツン、生え際カラー、明るめ茶髪、パーマなど、いろいろです。私は医療用にこだわらず、安いおしゃれウィッグをいっぱい買って、そのときしか楽しめない明るめカラーやロングやボブなど、都度つけ変えていました。 1年間くらいはウィッグをつけてテレビ出演していましたが、テレビをご覧の方は私がウィッグだと気づかなかったと思います。

 

 

闘病中の家族や周囲の変化を明かしてくれたえみりィーさん。「がんになってよかったとは思わないけど、感謝はしている」と、病気を患ったことで自身の考え方にも変化が生まれたことを教えてくれました。

 

PROFILE えみりィーさん

熊本県・福岡県を中心に活躍するタレントで、3人の子どもを育てるママ。2019年6月に「多発性骨髄腫(血液のがん)」と診断を受け、翌年1月に自家末梢血幹細胞移植。出身地・芦北町の「あしきた親善大使」としても活動中。え

 

取材・文/岡本聡子 写真提供/えみりィー