仕事に没頭すればストレスをためる時間もなくなる

── 達観していらっしゃいますね。

 

音無さん:私も仕事がすごく忙しかったので、もんもんと考えこむようなひまがなかったというのもあります。ほかに気持ちを持っていける場があったということでしょうね。私にとって、女優の仕事は天職だと思っているんです。演技に没頭していたら、ストレスなんて消えてしまいます。だから、仕事場で嫌な思いをしたり、人間関係で悩むこともいっさいないんです。

 

──「悩みのほとんどは対人関係」ともいわれますが、気にせず過ごせる秘けつはなんでしょうか?

 

音無さん:もちろん私にも苦手だったり、合わない人はいますよ。でも、自分のなかで「ここまで」と線引きをして、深くつき合わなければいいだけのこと。もしも嫌なことを言われても、「負けてたまるか!言ってなさいよ」くらいに思っていればいいんです。真正面から向き合わないことも大事ですね。

 

どうしても苦手な相手と向き合わざるを得ないなら、なにかしらその人のいいところを見つけてみるのもおすすめです。「好きにはなれないけれど、この部分はまあまあ尊敬できるな」「私にないものを持っているな」とか。すると、少なくとも大嫌いにはならずに済むから、気持ちが多少ラクになるのではないでしょうか。

 

自分がされたらイヤだなと思うことはしない。そして、相手が気持ちよくなること、喜ぶことを言ってあげれば、人間関係はそれなりにうまくいく気がしています。ただ、ストレスをため込むのもよくないので、もしも悪口を言いたくなったら、受けとめてくれる相手に言って、そこでもう「おしまい」にする。あとは、自分の仕事に没頭していればいいのではないかしら。

 

PROFILE 音無美紀子さん

おとなし・みきこ 1949年、東京生まれ。66年、劇団若草に入団。71年、TBSドラマ『お登勢』のヒロイン役で一躍人気女優に。以来、数多くの映画やドラマ、舞台に出演。著書に『がんもうつも、ありがとう!と言える生き方』など。夫は、俳優の村井國夫さん。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/音無美紀子