「死にたい」と言われたことがつらかった
── 最近のお母様の様子はどうですか?
西田さん:私が結婚する30歳くらいまでは両親と同居していましたが、現在は夫と実家の近くに暮らしています。父と母と兄の3人暮らしになりましたが、月日が経つほどに母の症状はよくなってきていて、最近は暴れる回数が減ったと思います。半年に一度くらい大爆発することがあるのですが、そういうときは父もわが家に避難してきますよ。
── 症状が落ち着いたのにはなにかきっかけがあったのでしょうか?
西田さん:私が実家を出たことが大きかったようです。母もわがままを言える人がいると甘えてしまうようで。私がいなくなってからは、しっかりしなくてはいけないと、責任感を少し持つようになったみたいです。
もちろん一生つき合っていく病気なので完治したわけではありませんが、薬を飲みながらうまくつき合っているよう。ちょっと症状がよくなると薬をやめてしまい、そうするとまた元に戻ってしまうので、その辺のバランスが難しいですよね。最近では私のトークイベントなどにも来てくれて、楽しそうにしています。
── お母さんのことでいちばんつらかったことはなんですか?
西田さん:やはり「死にたい」と言われたことでしょうか。自分自身の気持ちも落ちてしまうし、救えないのをただ見ているのはつらかったですね。ひどいことを言われたこともあったし、そんなに死にたいのであれば本人の思うようにさせてあげたほうがラクなのではと思ったこともありました。でも、今は生きていてくれて本当によかったと思っています。
このようなことがありましたが、私の家族はみんな仲がよく、基本的には性格も明るいんです。だからバラバラになるようなことはなかったですね。私自身もこの経験で、人に優しくなれたような気がします。それが今の介護の仕事にも、つながっているのかもしれませんね。
PROFILE 西田美歩さん
にしだ・みほ。1986年、東京都生まれ。2003年に「ミスマガジン2003」の読者特別賞を受賞し、アイドルとしてデビュー。『めざましテレビ』などのリポーターを務める。現在は介護タレントとして、介護職をしながら介護の魅力について広めている。
取材・文/酒井明子 写真提供/西田美歩