みんなで安心して子育てできる小児病棟へ
── 2年に1度見直される診療報酬の2024年度改定では、この要望書を受けて付き添い入院に関する改定が盛り込まれました。
光原さん:「親の希望により付き添う場合、付き添う家族の食と睡眠に配慮すること」という一文が、子ども1人が入院すると病院に支払われる「小児入院医療管理料」の算定要件に追加されました。つまり小児病院に対して、付き添い家族への食と睡眠の配慮を求めるものとなりました。
また、入院した子どものための看護助手や保育士の雇用に対し、加算がつくようになりました。人を雇用するためのお金が国から出ることで、病院は人を増やしやすくなりました。
── それは大きな変化ですね。今まで以上に安心して付き添い入院が送れるのではないでしょうか。
光原さん:医療者もお母さんたちも、「子どものために」という同じ思いを抱く「チーム」です。お互いに「ありがとうございます」というひと言が加わるだけでも、チームの雰囲気は大きく変わると思うんです。子どもたちを取り巻くチームをよりあたたかいものにしていくことに繋がっていければ、と願います。
ただ、小児病棟の資金不足や人手不足という厳しい現実はまだまだ変わっていません。小児病棟だけにこれ以上負担を強いるわけにはいきませんから、これからは小児病棟への支援も必要と考え、動いています。入院する子ども本人のためにも、親が笑顔で健康で、安心して付き添える環境づくりのために、これからも目の前の課題に前向きに向き合っていきたいと思っています。
PROFILE 光原ゆきさん
みつはら・ゆき。認定NPO法人キープ・ママ・スマイリング理事長。1996年に一橋大学卒業後、株式会社リクルートに入社。長女と次女の入院の付き添い、そして次女を亡くした経験から、2014年に現団体を設立。付き添い親の環境改善のために食の支援のほか、病気の子どもと付き添い家族の実態調査を行う。2023年にこども家庭庁らに提出した要望書は、2024年度医療報酬改定に影響を与えるなど、制度改善についても活動を行う。
取材・文/桐田さえ 写真提供/光原ゆき