残り少ない人生だから好きなようにやらせて
── 近藤さんはグレイヘアや更年期など、ご自身の変化を講演やインタビューでオープンにされています。
近藤さん:白髪にしても更年期にしても、「長く生きていると、こういうこともあるよね」という当たり前のことを話しているつもりなんです。たとえば私は講演会で閉経のことも話すのですが、メディアでは触れてはいけない雰囲気がありますよね。最近は、子どもを産む・産まないの選択、不妊治療のことは取り上げられるようになりましたけれど、「閉経した女性のことは考えてくれている?」と思うことがあります。閉経は、長く生きていれば当たり前に到達するマイルストーンであって、女性の人生の半分は閉経後です。ネガティブなことではないはずなのに、閉経すると「あがった」っていうのはいったい何?「女性として終わり」という印象を与える差別用語ですよね。そういう差別からは解放されないといけないと思います。
年齢や見た目による決めつけからは、どんどん自由になるのが理想ですよね。仕事もそうです。企業が定年を決めたり役職定年といって給料を下げたりするのも、年齢差別だと思います。
── 無自覚のうちに固定観念を持っていることは多いです。
近藤さん:『ルパン三世』の次元の声優をされていた小林清志さんが、亡くなる前におっしゃっていたんです。「孫の面倒なんて見たくない。オレはずっとここでやっていくんだ」とタバコを吸いながら。おじいちゃん、おばあちゃんはみんな孫が生きがいだなんて思わないでほしいですよね。「お孫さん、うれしいでしょう?」と言われて、「そりゃあ、うれしいけれど面倒はいっさい見たくない。残り少ない人生なんだから、私の好きにやらせて」と思っている人もたくさんいらっしゃると思いますよ。
この間、真っ赤な着物を作ったんです。グレイヘアにしてから、洋服でも着物でも黒や赤のような強い色をマイルドに着られるようになりました。でも、私が赤い色を着ていると「もう還暦ですか?」と必ず聞かれる。「還暦には赤いちゃんちゃんこ」なんて誰が決めたの(笑)。そういう固定観念にとらわれずに、これからもいろいろなことにチャレンジしていきたいです。
PROFILE 近藤サトさん
こんどう・さと。1991年にアナウンサーとしてフジテレビに入社。1998年に退社してフリーランスになり、ナレーションを中心に活躍中。母校である日本大学芸術学部の特任教授も務める。Youtubeチャンネル『サト読む。』では着物の魅力を発信している。
取材・文/林優子 写真提供/近藤サト