襟元がライダースジャケット風にアレンジされた「ライダース着物」姿の写真をSNSに投稿し、話題を呼んだ近藤サトさん。着物姿のイメージが今ではすっかり定着していますが、着付けはほぼ自己流なんだそうです。(全4回中の3回)

新聞広告を見てお教室に行ったら周囲が「えっ?」

── SNSに「ライダース着物」をお召しの写真を公開されて、メディアでも話題になりました。私も拝見しましたが、かっこいいですね。

 

近藤さん:ありがとうございます。2年前からYouTubeで着物のバラエティチャンネル『サト読む。』を配信していたら、全国の着物屋さんが私を認知してくださって、東京国際フォーラムで開催された着物のイベント「東京キモノショー」を取材させてもらいました。そのとき、ある呉服屋さんの男性が黒いライダースの着物を着ていらっしゃるのを見かけたのです。「かっこいいですね」と声をかけたら、「これ、女性ものなんですよ。着てみませんか」と勧められて。着画を投稿したらバズりました。「ライダースといっても、これでバイクは乗れないですよね」と話していたら、呉服服屋さんが「次は乗れるライダース着物を作ります」なんておっしゃっていました。

 

── 着物がお好きなのは以前からですか?

 

近藤さん:フジテレビ時代から好きで、アナウンサーをしていたころに着つけ教室に通いました。着物が好きで着たいけれど、着つけにお金がかかるから「自分で着られるようになりたい」と思って。「着つけ教室代もどうにかならんかな」と思っていたら、ちょうど「モニター受講生募集」の新聞広告を見つけて、すぐに申し込みました。今考えたら「え」と思うんですけど。お教室へ行ったらみなさんに「え」という顔をされました(笑)。無料で習える範囲だけ受講して、「これで十分です」とやめてしまって、あとは自己流で着ています。

 

着つけ教室代をケチった代わりに、50万円の着物を買いました。初めて自分で買ったその着物は、今でも着ています。裾が擦り切れてしまったのでお直しをしましたが、気に入って着ていますね。

 

近藤サト
成人式の振袖姿。当時はまだ着物に目覚めてはいなかった

── お直しをしながら長く着続けられるのが着物のいいところですね。

 

近藤さん:そう、着物は体型が変わっても、10キロくらいの増減ならカバーできますしね。流行はありますけれど、おばあちゃんやお母さんの古い着物に現代の帯を合わせてもすてきです。

 

── 近藤さんは、あえて白髪を染めない「グレイヘア」にされています。グレイヘアにも着物は似合いますね。

 

近藤さん:初めて白髪でテレビに出演したときはドン引きされて、ざわついて、その後テレビ出演のオファーが増えたのですが、着るものがない。うちはナレーター専門の事務所だから、ヘアメイクさんやスタイリストさんがいないんですよ。私の私服は黒とグレーばかりで公園のハトみたいだし、「どうしよう。着物ならあるから着物で出よう」ということになったんです。

 

でも、なかには「着物はやめてください」という番組もありました。着物は伝統芸能の人やお茶の先生が着るものであって、冠婚葬祭でもお正月でもないのに元フジテレビのアナウンサーの近藤さんが着物を着ると「前のだんなさんとも離婚したのになぜ着物?」と余計な情報を与えてしまうから、と言われて。テレビって意外とステレオタイプにとらわれているんですよね。びっくりしましたけれど、そのときはしかたがないからハトみたいな私服で出演しました。

 

その後は、オファーをいただいた番組すべてに「着物でいいですか」と聞いて、了承いただいた番組にはすべて着物で出演したんです。そうしたら「サトさんは毎日着物なんですか」と言われるようになりました。世の中の印象ってそんなものですよね。