ノルウェー人は待たされてもニコニコ。一方、日本人は…
── 日本の各地だけでなく、海外にも20か国以上訪れていらっしゃいます。きっかけは何でしたか?
大平さん:海外には目が見えていたころは行ったことがなかったんですが、15年前、僕が仲間とつくったYOSAKOIソーランのチームがフランスで開催されるイベントで踊りを披露することになり、パリに招待されたんです。初海外は、ヨーロッパの石畳に靴音が響き、足元までおしゃれに感じました(笑)。その4年後、友達と企画してカンボジアへ行き、観光もしましたが、設立にかかわった児童養護施設を訪れて即興トークショーをさせてもらうなどしました。海外旅行の新鮮さやインパクトはすごくて、もっといろんな国に行きたい、知りたい、とワクワクする気持ちがあふれ出てきましたね。
── なかでも過ごしやすかった国はどこですか?
大平さん:僕の場合、ひとつはノルウェーです。オーロラに会うために行き、いろんな街を歩きました。信号がなく、車通りがそれなりに多い道を渡らなくちゃいけないときがあったのですが、僕が白杖をちょっと前に出すと、すぐに車が停まってくれるんです。そうすると渋滞になるんですが、皆さん「どうぞゆっくり」「待ってるから大丈夫」と笑顔いっぱいの表情で僕が渡り終えるのを見ていてくれる。一緒にいた仲間がそう教えてくれました。「もしも日本だったら、後続車からクラクションが聞こえるのでは?」と、考えちゃいました。
買い物中も「どこから来たの?」「遠くから来てくれてありがとう」と声をかけてくれるし、レジで時間がかかっても、「おーちゃん、みんな笑顔で見守りながら待ってたよ」と仲間が教えてくれました。
また、視覚障がい者でもパーソナルスペースが保たれていることに驚きました。日本だと普通に道を歩いるだけで、急に触ったり引っ張ったりして誘導されることもあるのですが、ノルウェーではそんなことはなく、困っていると決めつけた行動はされない。でもひと声「エクスキューズミー!」と手を上げると、バッと周囲の方が寄ってきて「何か困ったことある?」「どうしたの?」と気持ちよく声をかけてくれるんです。全体的に余裕があっておおらかでしたね。福祉国家と呼ばれる背景には「ゆとり」があるのかな?と肌で感じました。
── ほかにも日本人との違いを感じた点はありますか?
大平さん:海外では、それぞれが自分の「想い」をもっと発信しているなぁって。自分のHappy(ハッピー)を知っていると感じます。また、誰かを助けた後の見返りや結果をそんなに考えずに体が動くのかなと思います。日本だと「うまくサポートしなきゃ」「失敗したらどうしよう」「かっこつけてると思われないかな?」などと考えてしまう人が多いのではないでしょうか。
日本人は優しいのに、もったいない。もっと声を発して、行動に移しても大丈夫なのにな、と思います。シンプルに、目の前に困った人がいたら助ける、サポートしよう。それでいいですよね?