いまの仕事が当たり前になり、何をしても慣れになってきたとき。満足感を得るか、危機感を感じるか。後者だった鈴木蘭々さんは新しいことにチャレンジします。そして、1度病欠で仕事に穴を開けた経験が、生き方を見つめ直すことになったそうです。(全4回中の3回)

芸能の仕事を続けながら感じたある危機感

── 鈴木さんは、30代後半でそれまでの事務所から独立されました。何か考えるところがあったのでしょうか?

 

鈴木さん: 「このままでいいのかな」という危機感はありました。芸能の仕事は、忙しい時期は仕事が朝から深夜におよび、基本的に自分でスケジュールを決められないため、ゆっくりとした自分の時間はまったくないんです。寝る時間を確保するだけで、精一杯な感じでした。

 

また昔は、現在のようにインターネットも浸透しておらず、たとえば家を借りたり、携帯電話を契約するのも店舗に行く必要があるので、事務所の人がすべて身のまわりのことをやってくれました。「まわりにやってもらっていいな」と思われるかもしれませんが、物理的にそうしなければ仕事が回らないし、タレント自身が商品なので仕事で代わりがききません。だから、会社としてもクライアントに迷惑がかからないようにタレントを徹底的に囲って、守るんです。

 

鈴木蘭々
愛猫と鈴木さん

当時は自分のペースでご飯をゆっくり食べた記憶もないくらい、本当に隔離された世界で生きているようでした。そんななか、芸能界は浮き沈みが激しい世界で、「ずっとこんな環境が続くわけがない、自分も何らかの変化をして、もっと世の中を知ることが大事なんじゃないかな…」と考えていました。

「話すより聞くのが好き」生きる上で参考になることが多い

── 鈴木さんは困った事態に直面したとき、どうやって乗り越えるのですか?

 

鈴木さん:基本的に私はあまり人には相談せずに、自分で解決するタイプです。相談するとしても、ごく少数の限られた人だけです。もちろん、専門的な事柄に関してはその道の人に聞きます。そもそも私は、自分のことを話す職種ではありますが、人の話を聞くのも大好きなので、いろんな人の話を聞いてきました。どんな人の話の中にも、生きるうえ で参考になる宝がいっぱいあります。私は、いろんな人から聞いた宝のストックをたくさん持っており、折りにふれその宝を、心の引き出しから引っ張ってきて活用しています。とても助かっています。

 

鈴木蘭々
デビュー当時のロングヘア姿

── 鈴木さんは、ふだんから周りの話をよく聞くタイプなのですね。

 

鈴木さん: はい。話題が豊富で、勝手にしゃべってくれる人のほうが一緒にいると楽ですね(笑)。寡黙な人だとこっちがしゃべらなきゃいけなくなるので気を使います。

 

──「話す」より「聞く」のが好きとは、意外な一面ですね。人との関係を大切しているからできることなのでしょうね。

 

鈴木さん:この歳になると、やはり、人は孤独になってはいけないと心から思いますね。仕事でもプライベートでも、すべてにおいてです。チャンスを運んでくれるのも人、災いをもたらすのも人ですが、いろんな人の力をお借りして生きていると実感します。