訓練を経てひとり暮らしが再びできるように

大平啓朗さん
2005年2月、函館での生活訓練中。レクリエーションの一環で、失明後、初のクロスカントリースキーの体験をしたとき

── 退院されてからはどんな生活になったのですか?

 

大平さん:まず、山形の病院から地元・北海道の病院に転院し、3か月ほどリハビリなどして過ごしました。そこを退院してからすぐに、札幌の盲導犬協会が実施している生活訓練(自立訓練)の合宿に3週間、参加しました。

 

「アパートのひとり暮らし」のような環境での訓練は、本当に楽しくてしかたがなかったです。朝起きて布団をたたみ、掃除機でそうじ。洗濯機で洗濯をして干し、火を使ってお湯を沸かし料理をする。どれも目が見えたころにはできていたことなのなので、コツさえつかめばもともとやっていたことが飛び級でもう一度できるようになり、ひとり暮らししていたころの生活にどんどん近づいていって、すごくうれしかったですね。

 

── 生活訓練の中で難しかったのは何ですか?

 

大平さん:歩行訓練です。これは危険をともないますし、常に真剣でした。道路や周囲の建物、乗り物によって常に状況が変わりますし、人とのコミュニケーションもとても重要です。たとえば、よくあることなのですが、普段歩きなれている道でも僕が迷っていると思い、急に「危ないよ」と手を引っ張られることがあって…。そうした急で危ない行為に対しても、怒りで返すのではなく、しっかりこちらの事情を説明し、安全な歩行をしなければならないのです。難しい単独歩行、「目が見えたころの自分を追い越す」を目標にして頑張りました。