曲の弾き語りをする姿が印象的な歌手のKさんは「小学生のピアノの習い事は続かなかった」といいます。長女のピアノの発表会で連弾するために猛練習した結果、現れた変化とは。(全3回中の3回)

「同じミュージシャンとして」長女とピアノ練習

── 娘さんとピアノを一緒に弾くこともあるそうですね。

 

Kさん:僕が曲をアレンジして、長女がメロディを弾く形でピアノの発表会で連弾をしました。でも最初のころ、娘は一緒に弾くことをすごく嫌がっていました。僕はプロでやっているので、娘は「自分が失敗したくない」という気持ちがあったようです。

 

Kさんと柳沢慎吾さん、関根勤さん、関根麻里さん
「みんないい笑顔!」プライベートでも関根家と親交の深い柳沢慎吾さんと

でも僕からすると、子どものうちにたくさん失敗の経験をしてほしいという気持ちがあって。失敗がないと次、頑張ろうとも思えないですし、悔しさからそれを乗り越えようという気持ちも生まれないと思うんです。練習のときは結構厳しくしてしまっていたんですが、それは先生や親という立場ではなく、同じミュージシャンとして、ステージに立って人に聴かせる人間としての思いがあったからです。1回目より、2回目の発表会のほうが、娘の成長も見られました。

 

── ピアノは人気の習い事ですが、なかなかお子さんが練習に取り組まないと悩む親は多いです。

 

Kさん:うちも最初のころは譜面をひたすら見ながら弾くという繰り返しで、なかなか伸びなかったのですが、娘は発表会の日程が決まってから変わりました。まず、弾く姿勢が変わり、頭に曲をしっかり入れるようになって。もし僕がピアノの先生なら、毎週小さいピアノの発表会を作りたいなと思いました。動画に撮って、サイトにアップするというのもいいと思います。何か目標を立てて、見た人からいいねをもらえるとか、身近な目標がずっとあることがモチベーションにつながると思います。あとは、練習のやり方を変えるのもおもしろいです。決まった練習曲だけでなく、自分が好きな曲を弾くとか、先生がアレンジして弾くとか、親と一緒に連弾するなど変化を加えて楽しむのもいいですね。

 

Kさんと関根勤さん
仕事もプライベートも一緒の時間を過ごすことが多いというKさんと関根勤さん

── Kさんも小さいころからピアノを習っていたんですか。

 

Kさん:小学生のころ、1週間だけ習ったことがあったんですけど、合わないと思って続けませんでした。ピアノにハマったのは高校生からです。完全に耳コピで。ピアノに対してつらいという経験はなく、好きだからずっと弾いていました。なので、娘たちのようにいわゆる習い事としてのピアノは正直わからないんですよ。僕の場合は、半年後に学園祭で発表するとか、コンサートまでに何曲かピアノで弾き語りをしたいという目標があったので続けてこられました。子どもの習い事もミュージシャンも実は同じで。僕らも出口がないと曲って書けないんです。コロナ禍のときがまさにそうでしたけど、ライブの予定も決まらず、次いつできるのか、お客さんが来てくれるのかわからない状況で曲は書けませんでした。

 

── 目標がないと熱も入りにくいですね。

 

Kさん:曲作りは本能でしていることなので、子どもの感覚とすごく似ているなと思います。「これを食べたい、ここに行きたい」と思わないと、子どもって絶対に動かないですよね。身近な目標を親や先生が考えて、球を投げ続けることが大事だと思います。僕も子どもと同じで目標がないと動けないタイプです。