TVや演技の挑戦で「モデルの仕事が好き」と自覚
── 表紙モデルとして大変だったことを教えてください。
小泉さん:表紙モデルは「雑誌の顔」となる存在。雑誌ごとに設定されたターゲットに合わせたイメージづくりが大変でした。たとえば『Oggi』は、「オフィスで働く女性」がターゲット。私自身はオフィスに通勤していないので、そのギャップを埋めるのに苦労しました。それから、ファッション雑誌では「秋はトレンチコート、春はデニム」といった感じで、シーズンごとにパターンがあるのですが、読者に「昨年と同じだな」と思われないための工夫も必要で。髪型や髪色を変えるなど「モデル自身のイメージチェンジ」をすることで、新しさを演出できるよう意識していました。
── 長年トップモデルとして走り続けてきた小泉さんですが、「今がピーク」と感じた瞬間はありましたか?
小泉さん:『CLASSY』時代かもしれません。2011年から7年間、表紙モデルを務めさせていただきましたが、私の年齢と雑誌のターゲット年齢が近く、好きな服を撮影でも着せてもらっていました。スタッフとの関係性もよく、毎号みんなで支え合って、ひとつのものをつくり上げていく雰囲気がとても心地よかったです。たくさんの雑誌に出させてもらうなかで、うまくいくときといかないときがありました。でも、波と同じように、人生って上がる瞬間があれば、下がる瞬間もある。「つらい時期がないと、その後、上がっていくこともできない」と考えて、そのときの大変さを受け止めてきました。
── テレビや演技のお仕事にも挑戦されたそうですね。
小泉さん:チャレンジしましたが、難しかったですね。特にテレビは会話のテンポがすごく速くて。そのスピード感に頭がついていかず、ようやく把握できたときには収録が終わっているという感じ。台本は用意されているのですが、出演者の器量で回していく要素も多く、雰囲気を読み取れずに迷惑をかけてしまったと感じた現場もありました。
ただ、モデル以外のジャンルに挑戦できたことで、「やっぱり私はモデルの仕事が好き」と感じることができました。スタッフ間の距離が近く、長期間準備してきたものを、撮影の瞬間に一気に集中させるものづくりの仕方が、私にはフィットしていると再確認できたんです。「自分らしく働く」ためには、いろいろと試してみることが必要だと気づかせてくれる経験になりました。
PROFILE 小泉里子さん
こいずみ・さとこ。1981年鹿児島県で生まれ、神奈川県横浜市で育つ。中学卒業後に芸能事務所に入り、1997年に『CanCam』の専属モデルとしてデビュー。その後『Oggi』『CLASSY』『Domani』の表紙モデルを務める。2020年に結婚、2021年に長男を出産。出産の3か月後に家族でドバイへ移住する。2024年4月よりポルトガルに移住し、日本を行き来しながら仕事を行っている。
取材・文/佐藤有香 写真提供/小泉里子