「痛みのせいにして逃げる」思春期特有の注意点
── うまく子どものサポートをする必要があるんですね。
岡野医師:運動をしているお子さんの体に痛みが出てしまった場合に、親御さんに知っていただきたいのは、お子さんが「痛みに逃げてしまう」ケースです。具体的には、調子がいいときには多少の痛みがあっても頑張れるけれど、調子が悪いときには、「パフォーマンスが悪いのは痛いから」となってしまうことです。
中高生くらいの患者さんと接していると、自分がうまくできないことを痛みのせいにして、逃げてしまう子が多いなと感じています。そう思ってしまうと、復帰するのもどんどん難しくなってきますし、思春期の時期に、本人に伝えて納得してもらうのも難しいです。親御さんには、そういうこともあると理解したうえで、お子さんと向き合っていただきたいです。
── なかなか子どもが自分を冷静に見つめ直すことは難しそうですね。
岡野医師:スポーツの場合は、ケガやオーバーワークだけではなくメンタルがパフォーマンスに現れてくることも多いです。プロの選手でも、メンタルトレーナーをつけている方がいらっしゃいますよね。
問診の際にも、学校や家で不安なことはないか、お子さんに聞くこともありますし、逆にお子さんがいないところで親御さんに聞く場合もあります。話を聞くと、友達関係や学校の勉強がうまくいっていないという悩みを持っている子も多いです。大人でも当てはまると思うのですが、仕事のミスを引きずってしまい、家庭でもうまくいかないとか、何かをきっかけに本質的なことにうまく向き合えなくなることはありますよね。お子さんが本格的にスポーツをする際は、メンタルケアも含めて考えることが重要になってきますので、うまく第三者の意見を取り入れるなどして、ご家庭でも状況を客観的にみていただきたいです。
逆のケースもあります。捻挫だと思っていたら骨折していたとか、実は腫瘍があったなどという場合もあるので、症状が続く場合は必ず医療機関を受診していただきたいです。1か所の病院で治らない場合は別のところで診てもらうことも大切です。
── 夏の間、猛暑の影響で屋外の練習が中止になっていたところも多いと聞きます。ようやく外で運動がしやすい季節になりましたが、運動をする際の注意点はありますか。
岡野医師:コロナ禍で運動をしていなかったとか、半年くらい部活がなかったという患者さんが再び体を動かし始めて、肉離れなどの筋肉系のケガや腰痛などを訴えて受診されるケースが多くありました。年齢を問わず、運動をする前には必ずストレッチや体操をしていただきたいです。ラジオ体操も、全身的な動きがあって体を伸ばせるのでおすすめです。
体を痛めてしまって運動を控えていた場合なども急に始めるのではなく、1〜2週間前から少しずつ再開するようにしてほしいです。急に始めるとまたすぐにどこかを痛めてしまいますので、時間をかけて徐々に復帰することが大切です。ケガや長期で休んだ方には、ケアの方法と同時にスケジュールや対策を伝えるようにしていますが、せっかく気候のいい時期になりましたので、安全に楽しく、スポーツの秋を楽しんでいただきたいですね。
PROFILE 岡野達正医師
岡野整形外科院長。曽祖父の代から約100年続く東京・両国の整骨院を2016年に整形外科クリニックとしてリニューアル。スポーツ外傷や治療から予防まで、ひとりひとりに合ったオーダーメイド診療を目指す。
取材・文/内橋明日香