川にいるから思う日本の自然や水難事故の危うさ

── フリースタイルカヤックは川や湖で行う競技です。日々、自然と触れ合うなかで、感じることはありますか?

 

高久さん:自然環境の変化を肌で感じています。日本は水が多い国ですが、フリースタイルカヤックを行える川が年々少なくなっているんです。なぜならダムでせき止めている川が多く、水が流れなくなっているから。土砂も蓄積されていき、水位が浅くなっています。以前は関東にも、フリースタイルカヤックができるスポットがありましたが、近年はほとんどなくなってしまいました。水が少なくなったために、魚などの生き物も減っているようで、日本の自然との向き合い方を変えていく時期が訪れているように思います。

 

高久瞳さんと20年来師事しているコーチ
20年来師事している宮川さん(左)と練習をともにしている

また、最近は水難事故が多発し、子どもたちに「川で遊んではいけない」と指導する場合が多いようです。安全のためには当然のことではあります。でも、事前に危険を排除しすぎるよりは、適切な配慮をしたうえで幼いころから川になじんだほうが、危ないことが察知できるようになる気もしています。フリースタイルカヤックは、ライフジャケットを身に着けています。安全をしっかり確保したうえで、川やカヌーの楽しさを知ってもらいたいですね。

 

── 日々、自然と向き合っているからこそ感じることですね。今後、どんなことをしていきたいですか?

 

高久さん:今年もドイツのワールドカップ・女子カヤック部門で1位、という成績を残せました。もともと体力が続く限り、できるところまでとことんフリースタイルカヤックに取り組もうと思っていました。応援してくださる方もたくさんいます。これまで支えてくれた方たちに恩返しするためにも限界まで漕ぎ続け、ずっとずっと楽しみ続けられたら最高です。

 

PROFILE 高久 瞳さん

たかく・ひとみ。1982年生まれ。東京都出身。フリースタイルカヤック選手。社会人となった22歳の夏からカヤックを始めた。2011年度から国内大会に出場し始める。2012年度には日本代表選手となりワールドカップへ参戦開始、2013年度にはワールドチャンピオンシップでK1種目で銀メダル獲得。2019年、ワールドチャンピオンシップで念願の金メダルを獲得。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/高久 瞳