確率は39歳までの100人に1人
早発卵巣機能不全の研究や治療に長年取り組んでいる東京都世田谷区のローズクリニックの石塚文平院長は、40歳までに閉経する確率についてこう話します。
「早発卵巣不全と診断される確率は、29歳までで1000人に1人、39歳までで100人に1人です。近年、欧米では2%近くが40歳までに閉経するというデータも出ています。そのため、実際は1%より発症頻度は高いと思われます。44歳になると22人に1人といわれます」
早発卵巣不全によって女性ホルモンが不足すると、体にはさまざまな影響があるそうです。
「妊娠を望まれている方は治療が難しい不妊となります。卵胞が発育しなくなり排卵がなくなるので、妊娠できなくなるからです。女性ホルモンが不足することで、美容的な問題や、骨粗しょう症、心筋梗塞などの健康上の問題にまで発展する場合もあり、認知症になる確率が上がるというデータもイギリスなどでは発表されています。治療としては、一般的にはホルモン補充療法が必須で、具体的にはエストロゲン(女性ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)を組み合わせて投与していきます」
石塚院長は、特に妊娠を望む方は早めの治療が必要だと話します。
「20年ほど前までは早発卵巣不全の方の不妊治療は不可能だというのが常識的でしたが、私どもとスタンフォード大学が共同研究をした結果、一部の方では妊娠が可能であるということがわかりました。早発卵巣不全と診断のついた方でも、35歳までに来院されてから4年以内に自然の月経があった方は、38%の方が5年以内に赤ちゃんを授かっています。
ピルを何年も飲み続け、いざピルを止めると自然に月経が来なくなっていたという方が割と多いです。少なくても2年に1回、1年半に1回など、ピルをやめて自然に月経がくることを確認する事が大切です。また、日常的に喫煙をしている方は、非喫煙の女性よりも2年閉経が早くなるという調査結果もあります。喫煙すると血流が悪くなり卵巣の血流も低下するため、卵子が早く減ると考えられます。すでに月経不順、また長期間にわたり月経が起こらない場合は卵巣機能の低下が進んでいる可能性が高いため、健康維持の為にも、妊娠を希望するようであればより早めに産婦人科を受診しましょう」
早発卵巣不全と診断を受け、更年期の症状に向き合いながら生活する清川さんは、自身の経験が「誰かの役に立つかもしれない」との思いから、症状や治療経過についてInstagramに投稿しました。投稿には予想以上の反響があったといいます。
「DM(ダイレクトーメール)が100件以上来ました。『私も早発閉経です』とか、『41歳で同じ症状で悩んでいます』『閉経は早い方が楽だろうと思っていました』という声が寄せられています。私は更年期が始まってまだ1年目なのですが、この年齢ということもあって同世代の友達にはあまり理解をしてもらえません。ホットフラッシュと言っても、ただ暑いだけと思われてしまいますが、夏の暑さとはまったく違います。年上の方に話しても『またまた!まだ若いんだから』と言われてしまいます。
振り返ってみても私自身、何も知らなかったときは、子どもを産んでしまったら早く生理がなくなってしまったらいいとさえ思っていました。早くに閉経するとさまざまなリスクがあるということを知ってから、危機感を覚えました。更年期は目に見えないですし、症状にも個人差があるので、何か違和感を感じたらまずは病院に行って、自分の体を大切にしてほしいですね」
取材協力 石塚文平医師
ローズレディースクリニック院長。昭和大学医学部卒業、慶應義塾大学産婦人科、カリフォルニア大学留学を経て、聖マリアンナ医科大学産婦人科教授、同大学生殖医療センター長、同大学高度生殖医療技術開発講座特任教授を歴任、平成26年に同大学名誉教授、同年ローズレディースクリニック院長に就任。クリニックでは婦人科一般と不妊治療の診療を行っており、早発卵巣不全による不妊診療を専門とすることから全国から患者が訪れている。
取材・文/内橋明日香 写真提供/清川麻衣子、ローズレディースクリニック