「産後はすぐに仕事復帰しよう」と、いま思えば楽観的に考えていたと話すアナウンサーの川田裕美さん。「子どもは夜こんなに寝ないのか」と、初めて経験する子育てに苦戦し、夫婦の間にも一時は不穏な空気が流れたことも。(全4回中の2回)
「産後がこんなに大変だとは…」考えが甘かった
── 2020年に男の子を、2022年には女の子を出産されています。出産後の復帰はスムーズでしたか?
川田さん:1人目を出産する数か月前からコロナが流行りだして、リモートになったので少し早く産休に入ったような状況でした。復帰後もしばらくはリモートで、考えていたより長く休めた感じです。仕事が好きなので、出産したらすぐ働こうと考えていました。いま振り返ると、すごく楽観的だった気がします。実際は自分が想像していたのとは全然違って、産後働くってこんなに大変なんだと思い知らされて。「子どもってこんなに風邪をひくんだ」「夜こんなに寝られないんだ」と、体験してみて初めて知りました。
最初は母乳でと思っていたけれど、1人目のときになかなかうまくいかず、乳腺炎になりかかって。産んだら母乳が出るものだと信じて疑っていなくて、勉強がたりていなかったのだと思います。出産してはじめて自分の考えが甘かったことに気づかされた感じです。何もかもわからない状態で、壁にぶち当たるたびにあわてて対処する、そんなことの繰り返しでした。
出産3か月後には髪の毛が大量に抜けたことも
── 仕事との両立はかなり苦労されたようですね。
川田さん:1人目の出産後がもっとも大変でした。うちは夫婦とも大阪出身で、どちらの親も大阪にいます。親の助けは借りられないし、どこまで他人に助けを請うていいのかもわからない。ベビーシッターさんに頼ろうとしても、どうやって探すのかもよくわからず、家族以外の人を家に入れることに葛藤や抵抗がすごくあって。
でも、いざ仕事に行くと家のことが気になってしょうがないし、保育園からいつ呼び出しがくるかずっとビクビクしっぱなしです。人前に出る仕事ではあるけれど、見た目を気にする余裕もなくて、もうボロボロの状態でした。出産から3か月ほど経ったころから髪の毛がグワッと抜けだして、前髪がスカスカになったこともありました。毎日、鏡を見るたびに「うわっ!」という感じで、正直、こんなにすぐ復帰しなければよかったかもしれないと思いました。ひとりでため込んじゃいけないと思ったので、夫にはよく話をしました。頼れるのはもう夫だけでしたから。
子ども最優先「私も夫も仕事は半分にセーブして」
── それは大変な状況でしたね。
川田さん:夫はフリーで作曲の仕事をしているので、時間の調整はある程度できて、すごく助かりました。ただ、いざ子どもが発熱などで保育園から呼び出しがきても、テレビなどの収録中だったりすると私は動けない。そのぶん、夫にしわ寄せがいくことがあって、それは大きな負担だったようです。あの時期はちょっと不穏な空気になることもたびたびでした。
そこで、夫婦で何回も話し合って、仕事のしかたを変えようと決めました。保育園からいつ呼び出しがかかるかわからない状態では、これまでと同じようには仕事ができない。「子どもがある程度落ち着くまでは」ということで、夫も私も半分以下まで仕事を減らしていきました。アプリでお互いのスケジュールを把握するようにもしています。たとえば、新しい仕事を入れるときは、互いにスケジュールなどを確認しているので、前ほどあわてなくなりました。
── 仕事と家事のバランスはどのように取っていますか?
川田さん:1週間のうち数日は家のことをしたいので、土日に加えて平日も1、2日はお休みを取るようにしています。仕事を詰めすぎると家のことができなくなって、自分の気持ちに余裕がなくなってしまうんですよね。私にはこれくらいの休みが必要というバランスがだんだんわかってきた気がします。夫は子どもたちが保育園に行っている間と、寝かしつけが終わった後に主に仕事をしているようです。子どもが生まれて4年経って、やっと少しずつ生活が回ってきました。
いまも仕事は減らしていて、スケジュール的にどうしても難しいとなったときは、やりたい仕事をあきらめることもあります。夫も同じだと思います。子どもができたことで、やっぱり優先順位は変わりました。子どもはまだ2歳と4歳。命を守らなければいけない存在なので、何より大事で優先します。仕事のスケジュール調整がうまくいかなかったときは、子どもの急病で「すみません!」と、仕事を休ませてもらったこともありました。ただ、最近は親やベビーシッターさんもお願いするように。そういう積み重ねもあって、「周りにもっと頼っていいんだな」と、だんだん思えるようになってきましたね。
PROFILE 川田裕美さん
かわた・ひろみ。1983年生まれ、大阪府出身。和歌山大学経済学部卒。2006年読売テレビ入社。アナウンサーとして活躍し、『情報ライブ ミヤネ屋』で注目を集める。2015年読売テレビを退社し、フリーに転身。現在日本テレビ『ヒルナンデス!』水曜レギュラー、日本テレビ『1周回って知らない話』、読売テレビ『ピーチCAFE』ほか出演中
取材・文/小野寺悦子 写真提供/セント・フォース