ショックで引退「すぐに結婚もしたんですが…」

── きっと、「『あっぱれさんま大先生』のかなちゃんが…」みたいなタイトルで売ろうというもくろみがあったのでしょうね…。

 

中武さん:まさしくそうでした。ちょうど事務所がゴタゴタしている時期で、急にマネージャーと連絡が取れなくなって番組の収録を飛ばすトラブルも発生。さすがに「もうムリだな」と思って芸能界をやめました。

 

── 芸能界の引退を決断するほどだったんですね。

 

中武さん:「私はもうタレントして価値がないと判断されたんだ、落ちぶれたんだ」と思って、そんな自分を情けないと感じて、ほとほと嫌になってしまったんですね。そこから心機一転、頑張ればよかったのかもしれませんが、芸歴が長くてプライドも高かったので、自分の置かれた状況を認められませんでした。

 

── 「自分にガッカリしてしまった」という感じだったのでしょうか。

 

中武さん:そうでしたね。芸能界でのことは消し去って、これまでの人生をリセットしたい気持ちで、逃げるように引退し、その後、結婚したんです。相手は芸能界を辞めて友人の店を手伝っていたときに出会った男性でした。いまは離婚したので、元夫になりますが、10歳くらい年下で世代が少しずれていたので、私が『あっぱれ』などテレビに出ていたことも知らない人でした。だから、リセットするにはちょうどよかったんです。

芸能界を引退した後悔「逃げる人生はその後もつらい」

── 引退の裏には、そんな事情があったのですね。佳奈子さんは、タレントとして、どんなふうになりたかったのですか?

 

中武さん:後にイモトアヤコさんがバラエティ番組で世界を旅するコーナーを観て、「自分がなりたかったのは、こういうポジションだったんだな」と感じました。出演したことがある『ウルルン』で秘境ロケに行くことが多く、自分に向いていると思っていたんです。皆さんを笑顔にできるようなタレントになりたかったのですが、結局、逃げてしまった。プライドを捨てて、踏ん張ればよかったんですよね。

 

── でも、そんな話を持ちかけられたら、逃げたくなる気持ちもわかります…。

 

中武さん:でも、やっぱり「逃げたらダメなんだな」と痛感しました。逃げた時点で、過去を捨てたということ。自分のなかで、なかったことにしてしまっているので、振り返って反省したり、その後、行動を正すようなこともせず、後ろ暗い気持ちをずっと引きずって生きることになってしまう。結局、ムリに過去を封じ込めても、なにかの拍子に、そのフタは簡単に開いちゃうんですよね。忘れようとすればするほど、とらわれてしまう。だからもう過去から逃げるのは、やめたんです。自分の人生とちゃんと向き合うことで、ようやく自分のことが認められるようになって、生きるのがラクになりました。

 

PROFILE 中武佳奈子さん

なかたけ・かなこ。1982年、大分県生まれ。1988年から放送された人気番組『あっぱれさんま大先生』の出演メンバーの第一期生としてブレイク。その後も、ドラマやバラエティー番組、CMなどで活躍。28歳で芸能界を引退。現在は、YouTubeチャンネルで活動中。

 

取材・文/西尾英子 画像提供/中武佳奈子