芸人・石井てる美さんは、もともと東大から超大手企業に入社した経歴の持ち主。高校時代は身近な人を楽しませることに喜びを感じながらも、東大を目指して受験勉強に励みます。しかし、センター試験という大舞台で、ある事件が──。(全3回中の1回)
「いい大学」「いい会社」に入ることが、まっとうだと思っていた
── 子どものころから大人たちを笑わせる、ひょうきんな性格だったそうですね。
石井さん:親戚で集まると落語家のマネをしておどけたり、学校でもクラスのなかの「ひょうきんな奴」という立ち位置で、つねに盛り上げ担当でしたね。
──「東大出身の芸人」という異色の経歴で知られる石井さんですが、勉強は昔から得意だったのですか?
石井さん:真剣に向き合うようになったのは、中学校に入ってからでした。親の勧めで中学受験をしたのですが、あまり勉強しない子だったので、合格はしたものの勉強のコツがいまいちつかめなかったんです。でも、不完全燃焼に終わった悔しさからスイッチが入り、授業を聞いてきちんと勉強するようになったら、テストでいい点が取れるように。「ちゃんとやれば私にもできるんだ」と気づき、そこから勉強が好きになりました。
いっぽうで、中高時代は学園祭の実行委員として、企画から出し物までを担当。司会をしたり、自分もステージに上がって、安室奈美恵さんやSPEEDさんなど、流行りのアーティストのダンスを披露するなど、誰よりも楽しんでいました。そのときに、友だちから「テル(当時のあだ名)は、本当にエンターテイナーだよね」と言われて、すごく嬉しかったことを覚えています。
── 勉強もイベントごとも全力でサービス精神が旺盛。友だちになったら、絶対楽しそう。いわゆる“陽キャ”女子ですね。
石井さん:陽キャでしたね(笑)。ただ、ひとりのときは静かなので、“根暗の陽キャ”なんだと思います。人といると、楽しくなってどんどんはしゃいじゃうタイプ。人が好きなのでしょうね。
── そのころから、お笑いや芸能界に進みたい気持ちはあったでしょうか?
石井さん:憧れは心の奥底にあったと思いますが、職業として本気で考えたことはありませんでした。「もしも、もうひとつの人生があったら…」という妄想レベルですね。それくらい自分にとって、芸能界は無縁の世界で現実味がなかったんです。当時は、「いい大学に行って、いい会社に行くことがまっとうな人生」だと思っていましたから。だから、イベントでははっちゃけるけれど、授業や試験はすごく真面目に取り組んでいました。