髪の毛が薄く、中学3年時に「びまん性脱毛症」と診断され、現在は「先天性乏毛症」(せんてんせいぼうもうしょう)ではないかと自認しているmemeさん。学生バイトや就職など、社会に出て行くたびに自分の髪の毛とさらに向き合うことになります。(全3回中の3回)

「どこの美容院行ってる?」

大きなピアスが素敵

── memeさんの髪の毛は、子どもの頃から薄くて地肌が見える。縮毛で髪質が柔らかく、少ない毛量がフワッと広がり、髪の毛に対して人の視線を感じることもあると伺いました。大学生になって初めてバイトを経験した際、つらい思いをされたこともあったとか。

 

memeさん:飲食店のホールで接客をしてみたくて、バイトの面接を受けたら通ったんです。でも、初出勤の前日になって「ホールはいっぱいだから調理場に回ってほしい」と。「まぁ、いいか」と思いながら働いていると、同時期に入った男の子が「俺、調理場希望で入ったのにホールに回されたよ」と話をしているのを聞いて、私とチェンジされたのかなって思いました。

 

── 面接のときに髪の毛についても話が出たそうですね。

 

memeさん:スタッフの方から「お客さんが見たときに、病気の子を働かせていると思われたら困るからバンダナ巻いてほしいけどいい?」「全然いいですよ!」と言った会話をした矢先のチェンジでした。あぁ、そういうことかと。高校までは守られた環境だったかもしれないですけど、社会に出るとそうじゃないんだ、と強く感じた出来事でしたね。結局、この飲食店で半年くらい働いて、違うバイト先を探すことに。でも、いくつも応募したけれど、なかなか決まりませんでした。面接に行った先で、裏でスタッフ同士が相談しているのがわかるんです。

 

その後もいろいろ受けてみた結果、私を採用してくれたのがユニクロでした。ユニクロは人の個性も受け入れてくれるからなのか。ここでアルバイトをしながら少しずつ自信がついていった気がします。

 

── 大学卒業後は、広告の営業職として勤務。仕事ではウィッグをつけず、プライベートでお洒落をするときにウィッグをつけるなど、シーンによって変えていたそうですね。

 

memeさん:当時、ウィッグをつけているときは偽りの私みたいな感覚があって、仕事中はつけなかったんです。見た目に自信はないけど営業職はやりたい。街を歩くだけでも人から見られる状態で、葛藤もあったし、つらかったですね。

 

── 社内で髪の毛について聞かれることはありましたか?

 

memeさん:特になかったんですが、広告営業なので美容院もまわっていたんです。会議でも自然と「どこの美容院に行ってる?」といった話になりますが、そもそも美容院に行ったことがないし、私だけ周りからも聞かれなかったですね。みんなから気をつかわれているな…と感じながら、パソコンをただただ見ているときはすごくしんどかったです。

 

その後、結婚が決まって上京しました。転職した会社ではイベントがある日や行事ごとでウィッグをつけてみたら周りの反応がよかったので、勇気を出して、そのあたりから仕事中もつけるように。

 

── その後、家庭を持って2人のお子さんに恵まれました。上のお子さんは現在小学4年生、2番目のお子さんは幼稚園の年少さんで3歳だそうですね。お子さんから髪の毛について質問されたこともあったとか。

 

memeさん:上の子が3、4歳のときに「お母さんはなんでその髪の毛なの?」と聞かれ、「お母さんは生まれつきこの髪の毛なんだよ」「お母さんは外に出るときはおしゃれでウィッグをつけることもあるけど、お母さんはそのままでもかわいいんだよ」といった話を積み重ねていきました。次第に下の子も「どうしてお母さん髪の毛クルクルなの?」と聞くようになってきて「お母さんは生まれつきだけど、あなたはそうじゃないよね。お母さんだけいいでしょ(笑)」って。下の子も、私もウィッグも被りたいっていうから一緒に被って遊んだりしてます。