縫製工場の余り生地を活用して
── 子ども服はすぐにサイズアウトしてしまいますし、同じ月齢であっても発育には個人差があります。サイズ管理はどうされていますか。
関原さん:70サイズから130サイズまで揃えていますが、実は最も大変なことがサイズの管理です。大手アパレルさんも子ども服からの撤退が相次いでいるのですが、その理由は製造の単価に対して採算が取れないことや、お子さんの普段着にはコスパを求めるご家庭が多いことが挙げられます。すぐに着られなくなってしまう服を買うことに抵抗がある方もいらっしゃいます。
弊社では大手アパレルさんから依頼されて余った生地を利用して洋服を作っています。これは縫製工場で余った反物の管理コストを抑えたいというニーズも汲み取った形です。そのときそのときでどんな洋服が出来上がってくるかは分かりませんので、柄ばかりのことも、無地ばかりのこともあります。
いろんな種類のなかから子どもたちが自分で着たい洋服を選ぶので、子どもの好みが親とまったく違うことがわかることはおもしろい発見でした。普段、親が購入する服の色は、男の子は青や緑、女の子はピンクや紫というふうになりがちですが、子どもたちが自分で選ぶと、男の子がピンクということもありますし、「今日は友達とお揃いにした」という声も聞かれています。枠にはめ込まず、その子の感性を大事にしつつ周りとの協調を学ぶ機会にもなっているようです。
── サブスクを利用すると使い放題で洗濯もいらないとのことですが、月額の利用料はおいくらですか。
関原さん:月額880円から、お着替えやタオルなどを含む月額4708円のプランまであります。保護者の負担額は保育園園によって違いまして、たとえば4708円プランの利用でも1000円を保護者の負担として、残りは園負担としているところもあります。サブスクを導入することで、大切な子どもの命を預かる保育士さんの負担が減り、退職せず長く働き続けられます。その結果、採用のコストが抑えられるというメリットに理解を示してくださる保育園の経営者の方に利用していただいています。
サブスクを園で一斉導入するか、保護者が選択できるかは各園の選択なのですが、「この子はサブスクで、この子は持参」となると、個別の対応が必要となり手間がかかります。弊社としては一律での利用をお勧めするべく営業をしています。
── 実際に利用した保護者の方からはどんな反響がありましたか。
関原さん:サブスクを利用すると、保育園に届いた洋服を使い放題で着替えさせることができて洗う必要もないので、保育園帰りに公園で遊ぶ際にも汚れを気にせず、子どもに対して「ダメ」という言葉がけが減ったと言われます。それに自宅に帰ってから余裕ができたという声もいただきますね。働いているご家庭では自宅に帰ったらすぐ夕飯の準備をすることが多いので、そのあいだに子どもが「今日こんなことがあったんだよ」と話しかけてきても、話半分で聞いていることがほとんど。荷物がない状態で子どもが帰ってくるので、「子どもの顔を見て話を聞いてあげられるようになった」という話も聞きました。
弊社のサービスは、翌朝着ていく服を前日に持ち帰ることもできます。これまで「毎日この服がいい」とお子さんが駄々をこねていたご家庭では、同じものを着せるために毎日洗濯するのが大変だったそうです。翌日着ていく服をお子さん自身が選んで持ち帰るようになると、「私はこれを着て保育園に行く」と言うようになって助かりました、と言う声もありました。
── 保育士の方の負担を減らすことも目的とのことでしたが、保育現場への影響はどうですか。
関原さん:絵の具などを使う活動がある際に、事前に「汚していい服を持ってきてください」というような通知をする必要がなくなって、お着替えがなくなったら保護者に「今日は保育園の洋服を貸しています」とか「転んでズボンが破けました」いうような事務連絡も減ったと伺いました。その代わり、子どもの成長や今日の出来事に関する情報をお伝えする時間が増えたそうです。
子どもは洋服が破けるのも汚すのも当たり前ですし、自分たちが働いている間に楽しく保育園生活を送ってほしいというのが保護者の方の願いだと思います。未来を担う子どもたちにはたくさんの経験をしてほしいですね。
取材・文/内橋明日香 写真提供/関原勇喜