親子の悩みの種となる夏休みの宿題のひとつ「読書感想文」。あと数日で休みが終わろうとしている頃に、ようやく重い腰をあげて書き始める…そんなお子さんも少なくないはず。学校の宿題に加え、塾の夏期講習や宿題など、やることが盛りだくさんなのに、どうもダラけがちになるのもこの時期です。
親子ともにイライラしないために、『「雨が降ってきたので、カサをさした」が書ければ中学受験は突破できる!』の著者で、国語専門塾「内藤ゼミ」塾長・内藤俊昭さんに、ラクに読書感想文を書くコツと、夏休み中の勉強方法について教えてもらいました。
本選びが終われば、読書感想文の半分は終わっている!?
まずは読書感想文を書くための本を選ぶ必要がありますね。多くの自治体では、学年ごとにその年の課題図書や推薦図書を発表していますので、近くの図書館や、ホームページなどでチェックしてみましょう。
本のタイトルを見て「おもしろそうだな」「ちょっと興味あるな」と思った本を選んでください。タイトルだけではわからない…という場合は、ネット書店で検索すると大まかな内容や読んだ人のレビューが出ていますので、そういったものを参考にしてもいいでしょう。
次に感想文の書き方のポイントを4つご紹介します。
① 本との出合いを書く
「本との出合い」だって、当然感想文に盛り込んでいいコンテンツです。とは言っても、たいそうな理由を書く必要はありません。読書は本との出合いから始まりますから、きっかけはなんでもいいのです。たとえば、
- 友だちが読んでいておもしろそうだった
- 親にすすめられた
- テレビで話題になっていた
などです。
② 本のあらすじを簡単に書く
あらすじに触れるのも問題ありませんが、注意すべきは、ここで字数をかせごうとしないことです。原稿用紙3〜4行を目安に、「主人公のこと・物語の舞台はどこか・起きた出来事・それでどうなったか」を簡単にまとめましょう。
③ いいと思ったところ・悪いと思ったところを書く
ここからが、リアルな“感想”の始まりです。以下のア〜ウ、それぞれについて書いていきましょう。
ア すばらしいと感じた“場面”について書く
- どういうところに感動したのか。なぜすばらしいと思ったのか。
イ すばらしいと感じた“登場人物の行い”について書く
- なぜすばらしいと思ったのか
- 自分は同じことをできるだろうか。できないとしたらなぜだろうか
ウ 登場人物の行いで、もっともいけないと感じたことについて書く
- なぜその人はそういうことをしてしまったのか
- 自分ならどうだろう
- 本当はどうすべきなのか
④ これから何に気をつけてどう生きていくのがいいか、を書く
登場人物のような“すばらしい行い”をできるようになるにはどうすればいいのか、自分に当てはめて振り返る、感想文のシメの部分です。
- 「いけないこと」をしないためにはふだんから何を心がけるとよいか
- どのような人間になりたいのか
をまとめましょう。
以上の①〜④までを書けば完ペキですが、原稿用紙の枚数や字数の制限があるでしょう。一番短くまとめる場合は
- ① → ② → ③(のア) → ④
もう少し長くできるのであれば
- ① → ② → ③(のアとウ) → ④
の順に書きましょう。これでバランスのよい感想文ができあがるはずです!
ダラけがちな夏休み中の勉強は「時間」より「集中力」重視
長い夏休みに、効果的に勉強を進めるポイントは「1時間程度で終わる分量をこなしていくこと」です。勉強は、“何時間やったか”ではなく“どれだけ集中したか”が大切です。集中することで脳の働きが活発になり、考える力がつくのです。
ですから、子どもの勉強に関して一番よくないのは、「今から2時間勉強しなさい」などと時間で縛ることです。そうすると子どもたちは、2時間学習と向き合っていられる程度の真面目さで(力を抜いて)机に向かいます。たとえばジムのトレーナーに「とにかく休まず30分走ってください」と言われて、力いっぱい走る人はいませんよね。それと同じです。
そこでおすすめなのが、「クリアファイル勉強法」。まず、クリアファイルを何十枚か準備します。そして、ファイルにマジックでたとえば「7/28午前」などと書いて、7月28日の午前中にやるべき「計算ドリル」「漢字練習」「地理の問題集」などをコピーし、ファイルに入れます。夏休みの前半はファイルの中身を少なくして、集中すると1時間で終わるぐらいの量に。それを後半にかけて、ほんの少しずつ増やしていきます。
大切なのは、問題集やドリルをそのままファイルに入れるのではなく、“コピーして入れる”ことです。1枚の紙だと書き込みやすく、やらされるという被害感もとても少なくなります。
すべてをコピーするのは大変でしょう。しかし、子どもたちに、より本気で勉強をさせるためです。頑張ってください。これを前もって1週間分ぐらい作っておきましょう。
そしてもうひとつ忘れてはならないこと。それは子どもたちがファイルの中身を短時間でやり終えたとき、「じゃあ、もう少しやろうか」と追加してはいけない、ということです。家庭で行う勉強は、「まだできる!」と思っているうちに終わらせることが肝心ですよ。
PROFILE 内藤俊昭さん
国語専科「内藤ゼミ」代表。1952年生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。大手進学塾を経て、東京・代々木に国語専門塾「内藤ゼミ」を開設。「言葉を大切にすること」「自分で考えて表現すること」を教えること約40年。国語が苦手な中学受験生だけでなく、国語力をつけたい小学生の駆け込み寺のような存在として、人気を集める。近著に『「雨が降ってきたので、カサをさした」が書ければ中学受験は突破できる!』(主婦と生活社)がある。
イラスト(C)千野エー