高層ビルや展望タワーの階段を全力で駆け上がる「ステアクライミング」の国内女王・立石ゆう子さん。育児と仕事を両立しながら、国内外のレースを転戦し、世界ランキング3位に輝いています。目指すは世界一のママアスリート。立石さんが熱中するステアクライミングの世界とは── 。(全2回中1回目)

初めての階段レースで優勝!2年連続で国内サーキット完全制覇

2022年の日本選手権で東京スカイツリーの非常階段を駆け上がる立石さん

── まず初めに、ステアクライミングとはどのような競技なのか教えてもらえますか?

 

立石さん:ステアクライミングとは「階段競技」とも呼ばれ、高層ビルや展望タワー、鉄塔などの階段をどれだけ速く駆け上がれるかを競うもの。パリのエッフェル塔やニューヨークのエンパイアステートビルなど、各国を代表するランドマークを舞台にした世界シリーズ戦も行われているほど、世界的に人気が高まっている都市型スポーツのひとつです。

 

国内では、東京・大阪・名古屋で開催されるレースでの獲得ポイントを競う「ステアクライミング・ジャパンサーキット」というシリーズ戦があります。私は一昨年、昨年と完全優勝を達成していて、国内外を転戦する世界シリーズ戦では3位に入ることができました。

 

── 国内では負けなしなのですね!ステアクライミングはまだマイナースポーツですが、立石さんはどのような形で出会ったのでしょうか?

 

立石さん:中学から大学まで陸上部で長距離に取り組んでいたのですが、卒業してから数年間は競技を離れて飲食関係の仕事に就いていました。でも26歳の頃、大学時代にお世話になった先生から「子どもの陸上教室でコーチをやらないか」と誘われたんです。コーチなのに走れないのはおかしいな……と、それをきっかけに競技を再開しました。

 

走るなら本気で上を目指そうと、仕事もアルバイトに変えて、日本選手権の表彰台を目指していたのですが、ただでさえブランクがあるのに、トップの選手と競うのはなかなか厳しい世界で…。そんなとき、シューズを買いに行ったお店で、スカイランニングのチラシが目に留まったんです。

 

気になってネットで調べてみたら、あべのハルカス(大阪)で開催されるレースの参加者募集記事にたどり着きました。そのレースは世界シリーズ戦のひとつで、一般の部の優勝者への副賞に「海外戦に招待」と書いてあって。陸上では世界なんて遠いものだったので、「これはチャンスだ!」と思ってエントリーすることにしたんです。

 

── 初めての階段レースの結果はどうだったのでしょう?

 

立石さん:一般の部で優勝することができて、副賞で香港のレースへの参加権をもらいました。その試合に出たとき、エリートの部で表彰台に立っていた渡辺良治さん、吉住友里さんの姿を見て、「日本人でも海外の選手と戦えるんだ」ってすごくカッコよく見えたんです。二人から「適性あるからこれからもやろうよ!」って言ってもらえたのがうれしくて。特に渡辺さんからは「来年から一緒に世界シリーズ戦を回ろう!」と勧誘されて、このまま世界を目指して頑張っていきたいと思ったんですよね。

 

── 初レースで優勝したのですね!それまでご自身に「上りの適性」があるとは思っていなかったのでしょうか?

 

立石さん:陸上をやっていた頃から、高尾山でのトレーニングを入れていたんです。他の方と走ったときに「上りが強いからそういう競技があったら活躍できるんじゃない?」とは言われていて。でも、それを生かせる競技があるとは知りませんでした。初めての試合で優勝できたことで、「もしかしたら素質があるのかな」と自信を持てたんです。翌年からは、階段競技と並行して山岳競技にも挑戦するようになりました。

 

オーストラリア・ウィーンの超高層ビル、DC(ドナウシティー)タワーでのレース後にパシャリ!