「アンジェラ佐藤」にスタッフからも視聴者からも批判
── いきなり女王になったのは、大食い業界でも衝撃だったでしょうね。ところで、「アンジェラ佐藤」という芸名は、2009年に初出演した『大食い王決定戦』で司会をしていた中村有志さんが名づけ親ですよね?
アンジェラ佐藤さん:そうなんです。しかも実は、芸名は後づけです。最初、スタッフ会議では、「アルペン佐藤」という芸名が用意されていたそうです。私が北海道出身で、元アルペンスキー選手だったからなんですけど。
でも、本番が始まってから、いきなり中村さんが「この子はアルペンじゃない!アンジェラ・アキに似ているから、アンジェラ佐藤にしよう!」と言って、もう編集できないくらい、「アンジェラ佐藤!」って連呼してくださって。スタッフさんは、「正直全然似ていないし、“アルペン佐藤”って名前を用意していますから」と何度も説明するんだけど、もう中村さんがおかまいなしで(笑)。そんな中村さんのおかげで、本当にアンジェラ佐藤になりました(笑)。
── 私の中では「アンジェラ佐藤」としてなじんでいるので、まったく違和感はないですが(笑)。
アンジェラ佐藤さん:当時はSNSで「全然似てないのにアンジェラを語るな」って、批判のコメントが100件くらいきちゃって、落ち込みました(苦笑)。でも正直、スタッフさんが決めたアルペン佐藤のままだったらここまで生き残れなかったと思います。街を歩いていても、「アンジェラさん」って言われることが多くて、嬉しいし、ありがたいです。
引きこもって漫画を読んで終わる人生だと思ってた
── 大盛りメニューをきっかけに、何もかもうまくいかなかった人生から大食いタレントになるなど、かなり大きく変わったと思いますが、当時を振り返ってどう思いますか?
アンジェラ佐藤さん:これは真面目な話ですが、「どんな人間にもムダな時間はない」って思います。たとえば、部屋に閉じこもって漫画を読む日々だったとしても、その漫画が大好きでいろんなシリーズを読んでいたら、そんな時間もすべて、タレントになった途端、仕事のネタになったりする。私の場合、食べ放題につき合わせすぎて当時の彼が体調を崩してしまったり…いろいろあったのですが。彼には申し訳なかったけれど、それも私の今の人生に繋がっているのは間違いないので。
大食いの世界に入る直前の私って、本当にいろいろなことを諦めていました。そんなときに、たまたま大盛りメニューを完食できたことで、「私でもできるじゃん」って小さな自信が生まれて、「大食い番組に応募してみるか」って思えるようになったんです。偶然生まれた軽い気持ちから、まさかまさかの大食いタレントとしての道が開かれていって、人間って、何がきっかけでどうなるのか、本当にわからないなって思います。
── 今では、大食いタレントを代表するひとりとして活躍されています。
アンジェラ佐藤さん:ほんとに不思議なことで。ただ、人って、何かにつまづいたりすると、「どうせ」とすべてを否定してしまいがちですが、いつかきっと、そんな自分やムダに思えた時間すら武器にもなるときがきます。
だから、今、部屋に引きこもって、毎日ベッドの上で漫画を読んでいるだけの人にも、「そういう時間もムダじゃないんだよ」と言いたいです。人生で悩んでいる人にも、「悩んでいる自分すらいつか必ず武器になるから」と伝えたい。フリーターでふらふらしていた人間が、ある日突然、タレントとして活動するようになって、そこそこ順調に生きてくることができた、そんな私だから言えることもあると思っています。
PROFILE アンジェラ佐藤さん
あんじぇら・さとう。北海道出身。28歳の頃、たまたま食べた大盛りメニューを完食したのをきっかけに、趣味で大盛り店巡りを始める。33歳で初出場した「大食い王決定戦」で4位になり、2度目の出場では全ラウンド1位の完全優勝を果たし、大食いタレントとしてデビュー。現在は、活動の幅を広げ、アジア各国のイベントや番組にも出演している。
取材・文/高梨真紀 写真提供/アンジェラ佐藤