結婚22年、16歳の長女の子育てをしている浅香唯さんには、いま、ちょっとユニークな悩みがあるといいます。つきあって35年という夫婦の関係についても聞きました。(全5回中の4回)

 

目元がそっくりな娘に「自分のイライラをぶつけないように」

── 現在、16歳のお子さん・陽舞莉(ひまり)ちゃんのママでいらっしゃいます。以前、公開されたインスタグラムでのツーショット写真では、「目元がママそっくりで可愛らしい」と話題を呼んでいました。とても仲の良い様子が伺えますが、お子さんとの向き合い方で心がけてきたことはありますか?

 

浅香さん:子どもを「叱る」場面では、できるだけ「怒らない」ように心がけてきたつもりです。望ましくない行動を注意したり、大切なことを伝えるために叱っているつもりが、あとから振り返ると、そこには「怒っている自分」がいるなと、あるときふと気づいたんです。「なぜ、何度言ってもわからないんだろう?」と、イライラした怒りをぶつけてしまっていたんですね。

 

でも、それって私自身の感情であって、子どもには関係のないことだなと。それから、子どもを叱るときは、“これは私の怒りではないのか?”と、ひと呼吸おいて考えるようになりました。とはいえ、やはり人間なので感情が先走ってしまうこともあって、なかなか難しいなあと感じますね。

 

── それに気づいたのは、なにかきっかけが?

 

浅香さん:やっぱり子どもの反応ですよね。成長するにつれて、聞く耳を持ってくれるときとそうではないときがあって、“いったい何が違うんだろう”と思ったんです。すると、ちゃんとコミュニケーションを取りながら、何がダメだったのかを穏やかに伝えられたときは、ちゃんと理解してくれていることに気づきました。

 

── コミュニケーションといいますと?

 

浅香さん:うちでは、スキンシップをすごく大事にしてきました。 “私は絶対的にあなたの味方で、あなたが大好きなんだよ”といつも感じてほしくて、一緒にお風呂に入ったり、ベッドで横になっておしゃべりをしたり。すると、娘も自然と悩みを話してくれるんです。「大好き!」と伝えて“むぎゅっ”とするのは、それこそしつこいくらい続けてきましたね。スキンシップをたくさんとって信頼関係ができていると、聞く耳を持ってもらいやすい気がします。

16歳の娘の反抗期「まだ来ないから待っているところ」

── それは、お子さんがいつごろまでしていたのでしょう?

 

浅香さん:いまも強制的にやります(笑)。さすがに、一緒に寝たりはしませんけど。でも、だんだん「あ~、はいはい」みたいな、ちょっぴり雑な対応をされることも(笑)。

 

── 16歳だとそうなりますよね(笑)。ちなみに、いまのお子さんは反抗期がないという話をよく聞くのですが、いかがでしたか?

 

浅香さん:そうなんですよね…。じつは私たち夫婦もいまだに待っているところです。夫が娘に話しかけたときに、「ふ~ん、いいんじゃない?」とクールな返しをされると、「あれっ…これってもしかして反抗期かな?」って。

 

── 反抗期って、そんな待ちわびるようなものでしたっけ(笑)。

 

浅香さん:“反抗期になると親もナーバスになるけれど、子どもにとっては大事な成長の過程だから、私たちはふつうでいようね”と、ふたりで覚悟を決めていて。だから、いつ反抗期が来てもいいようにと、準備は万全です。

 

── 意気込みはわかりますが、お子さんもプレッシャーだと思いますよ(笑)。もしもこの先、娘さんにママと同じ芸能の道を歩みたいと言われたら、どうしますか?

 

浅香さん:私も親の反対を押しきって上京してきた身なので、ダメだとは言いたくないという気持ちはあります。自分が親から反対されたときに、“なぜ私のことなのに大人に決められなくてはいけないのだろう”とすごく反発したんですね。だから、子どもの進路を大人の思いで曲げたり、誘導したりしてはいけないなと。子どもが望む道を全力で応援しようと思います。

結婚前は月に1回お互いのことをメモして渡し合っていた

── ドラマーである夫の西川貴博さんとは、仲よし夫婦として知られています。円満でいるための秘けつはなんでしょう?

 

浅香さん:ケンカをしたときの「言葉のチョイスだけは気をつけよう」というのが、暗黙のルールになっています。言葉ってすごく大切だと思うんです。感情的に発してしまったひと言だとしても、その人の心の中に1回刺さっちゃうと、傷が残ってしまって、信頼を取り戻すのが難しい。ですから、できるだけお互い傷はつけないようにしたいなと。ただ、もともとお互いのんびりしたタイプなので、それほど意識しているわけではありませんが。

 

2022年7月に結婚20周年を家族でお祝いした際のご夫婦のツーショット/浅香唯インスタグラム(yui_asaka_official)より

── 慣れ合いがちな間柄だからこそ、言葉を大事にする。お互いに余裕がなくなると、つい感情的な言葉を発したり、相手に負けまいと嫌味を言ったりすることも。小さなほころびが修復不能な傷になるケースも少なくありません。

 

浅香さん:そう思います。夫とはつき合っているときから、お互いの思いを伝え合うことを大事にしてきました。月に1回、お互いの「いいところ」と「直してほしいところ」を紙に書いて見せ合っていたんです。もともと私が、遠慮して言いたいことを言えない性格なのを彼がわかっていて、「それなら紙に書いたら伝えられるんじゃない?」と提案してくれたのが始まりでした。

 

結婚して22年。交際期間を含めると、もう35年以上も一緒にいるんだなと思うと、なんだか感慨深いですね。ただ、人生の先輩方に言わせると、まだまだヒヨッコなんだそうです(笑)。これからも、お互いのペースを大事にしながら、ともに人生を歩んでいきたいですね。

 

PROFILE 浅香 唯さん

あさか・ゆい。1969年生まれ、宮崎県出身。1984年、ザ・スカウトオーディション「浅香唯賞」を受賞。翌年、シングル『夏少女』で歌手デビュー。86年、フジテレビ系連続TVドラマ『スケバン刑事Ⅲ 少女忍法帖伝奇』で主役の三代目麻宮サキを演じ、ブレイク『Believe Again』『C-Girl』『セシル』など多数のヒット曲を持つ。2002年に結婚、2007年に長女を出産。

 

取材・文/西尾英子 画像提供/ジャム企画