大人の社交場が「推し活の場」に変わった

── ホストは華やかないっぽうで、トラブルに巻き込まれる危険もあるのではないでしょうか?

 

城咲さん:まさにそのとおりです。一歩間違えると犯罪行為になりかねません。だから、現役当時は「城咲仁」というブランドを大切にして、クリーンなホストでいるため、みずからにルールを課しました。

 

具体的にはお客様とは体の関係を持たない、店外でお客様とふたりきりで会わない、ピアスを開けない、肌を焼かない、身だしなみに気を配るといったことです。

 

── 現在、ホストが客の飲食代金を立て替える「売掛金」が問題になっています。こちらについてはどう思いますか?

 

城咲さん:ホストクラブがSNSなどを通してメジャーになった弊害だと思います。僕が現役のころは、ホストクラブは大人の社交場だったんです。バリバリ仕事をしている女性社長や銀座のママたちが遊びに来る、敷居が高い場所でした。

 

ところが現在はホストクラブが「推し活」をする場所になっています。自己肯定感の低い若い子がお店に来ると「ホストって優しい。私の話をちゃんと聞いてくれる」と夢中になってしまうんです。その結果、お気に入りのホストをトップにさせようと、借金してでも貢いでしまいます。本来であれば、お客様がそこまでする前にホストが止めるべきです。

 

城咲仁
ホストのOBとして現在のホストクラブの売掛金問題に関する講演会も行っている

僕が現役のころはお客様が第一でした。もしお客様に「ホストクラブってつまらない」と思われたら、二度と来店してもらえません。いかに楽しんでいただくか必死でした。ところが現在は、お客様がホストの機嫌を取っている状態です。ホストクラブの構造がすっかり変わってしまいました。

 

「ホストがメジャーになったのは、城咲仁がテレビに出たのも一因だろう」とも言われてしまうのですが、やっぱり現在のホストクラブはいびつになっているように思います。なんとかこの状況を変えられないかと、OBである僕も考えています。

 

PROFILE 城咲 仁さん

しろさき・じん。タレント、実業家。新宿・歌舞伎町のホストクラブで5年間No.1ホストを務める。カリスマホストとして数多くのテレビ番組に出演。ホスト時代から全国にその名を知られ、2005年タレントに転身した。バラエティ番組などで活躍し、テレビ通販では1日2億円売り上げるトップセールスに。21年、タレントの加島ちかえさんと結婚。22年、実家の町中華「丸鶴」の味を伝える、「丸鶴魂」を立ち上げ、冷凍チャーハンの通信販売も行う。

 

取材・文/齋田多恵 写真提供/城咲 仁