2024年1月から子どもの視野を広げるためにオーストラリアに移住した馬淵優佳さん。結婚・出産・移住を経験し、自分の中の小さい世界が広がったそうです。(全4回中の4回)
最初は無理!と言っていましたが
── 2024年の1月からオーストラリアへ移住されたそうですね。異国の地での暮らしはいかがですか?
馬淵さん:オーストラリアは以前にも飛び込みの試合や旅行などで滞在したことがあり、今回で3回目になるので、まったく馴染みのない土地ではありませんでした。私の英語も日常生活を送るぶんにはそんなに困らないのと、日本人もすごく多くていろんな国のレストランや食材がすぐに手に入るので食にもあまり困ってないですね。
ただ一度、車と家の鍵を出先で失くしたことがあり、そのときはピンチでした。どこに落としたか見当もつかなかったので、その日に行ったすべての場所に電話。対面で話すときは緊張しないのに電話だとちゃんと通じるのか急に不安になり、一生懸命英語のセリフを作ってメモしました。結果的に見つかりましたが、あれは個人的にはかなり緊張しましたね。
── 娘さんたちはオーストラリアの生活を楽しんでいますか?
馬淵さん:娘たちもすぐ馴染めたようで、英語も無理なく覚え始めていて、楽しそうに遊んでいます。現地の幼稚園に通っているのですが、日本人の先生もいて日本人の親子留学をされている方も多く受け入れている幼稚園を選びました。
オーストラリアに来る前にインターネットで、海外の幼稚園は野放しとか、先生は名前も覚えないなんて書きこみを目にしてすごく不安だったのですが、今通っている幼稚園はすごく手厚くてホッとしました。
── 日本の幼稚園との違いで驚いたことはありますか?
馬淵さん:違うところばっかりですよ。すべてが衝撃でした。まず登園時の洋服の指定がないこと。日本の幼稚園では動きやすい服とか、ポケットのあるズボンでとか細かく指定があったのですが、こちらは自由。プリンセスのドレスとかで来る子もいます。
この間、お迎えに行ったら幼稚園にあるミントの木の周りに女の子たちが仲良く座っていたので、何してるのかな~とのぞいたら、子どもたちがそのミントを摘んで食べてたんですよ。それ、食べていいの?と聞いたら「全然大丈夫~、美味しいよ」って先生も笑顔(笑)。日本の学校だと植えてあるものは勝手に食べちゃいけないと注意されますよね。
ほかにも、自分の子どものお誕生日は、お誕生日の子が自分でケーキやお菓子を学校に持参し、みんなに振舞ってお祝いをしてもらうんです。もちろんやってもやらなくてもいいんですが、ちょうど次女がこの間お誕生日でそれをすごく楽しみにしていたので、お気に入りのドレスを着せてコストコでドーナツをいっぱい買って持っていきました。
── 新しい生活もすごく楽しんでいるようですね。子育てのモットーはありますか?
馬淵さん:わが家の子育てのモットーは「否定をしない」ですね。私もほかの子どもを指導する機会をいただいているのですが、なんとなく最近の子は「これやってみようか?」とうながしても「無理」と拒否する子が多いと感じるんです。
飛び込み競技で新しい技に挑戦する時は絶対に怖くて、そういう気持ちはよくわかるんです。でも挑戦する前から否定的な気持ちになってしまうと、乗り越えられるはずだった壁も乗り越えられなくなるのでは、と。
自分の子どもには「とりあえず1回やってみよう」と挑戦できる子になってもらいたいので、そのためにも日ごろから「それできないでしょ?」とか「やめたほうがいいよ」と否定をしないように心がけています。
── でも、もし子どもが挑戦をためらっていたらどんな言葉をかけますか?
馬淵さん:たとえば最近、長女は腕に浮き具をつけて1メートルの飛び込みにチャレンジしたんです。最初は「無理!」と言っていましたが、どうしてそう思うのか理由を聞いたら、「高くて怖い」と。そこで「大丈夫」と声をかけるのではなく、「どうやったらいいかな?」と聞いてみたんです。すると「低いところならできるかもしれない」と答えたので、怖くないと思える高さのところまで移動して、「慣れるまでそこでやってみよう」とうながしてみました。そうしたら、何回かやった後に「やっぱりチャレンジする」と。どうしてできないのかを考えて、できるようにうながすことを心がけました。
こういうときって乗り越えてすごいなと思うんですけど、できないと言っていた子どもに勇気を出させた私もすごいって、親の自己満足みたいなものも得られます(笑)。
── その一方で子育ての悩みはありますか?
馬淵さん:姉妹の意見が噛み合わないときが一番大変です。たとえば、長女はプールに行きたいけど、次女は家にいたい、みたいな。その場合、どっちの味方になってあげたらいいんだろうとか、何を基準にして決めたらいいんだろうと悩むときも。やっぱり2人とも意思がちゃんとあるから、それぞれ尊重してあげたいし、中立の立場でいたいけれどなかなかできなくて。
わが家の場合は話し合いを挟みつつ、結局、最後はじゃんけんになるんですが、皆さんどうしてるのか気になりますね。