留学生活のリアル「引越し直前のお知らせに驚いて」
── 海外生活を送るなかで困ったことはありますか。
高橋さん:今年の8月でこちらに来て3年目に入るのですが、とにかく1年目は何もかもが大変でした。車を使わずに生活しているので、どこに行くにも移動の不便さがあります。日本のような宅配便の再配達のようなサービスもないので、受け取れなかった荷物をとりに行くのもひと苦労です。買い物もアジア食材など目的のものがあれば、日本のスーパーのように1か所で必要なものが揃うわけではなく、いろいろな店に行かなくてはなりません。どこで何が買えるかを把握するのにも時間がかかりました。
最初はキッチン付きのホテルで生活を始めて、そこから渡航前に契約していた賃貸の家に入居することになっていたのですが、引っ越しの直前に「入居時期が遅れます」というお知らせが来ました。こちらではよくあることらしいのですが、びっくりしますよね。食器1枚揃えるところから始まり、生活を整えながら慣れない環境で仕事をして、息子は学校もあって。右も左もわからないという言葉が相応しかったと思います。
── 日本の仕事をリモートでしているとのことですが、時差の影響はありませんか。
高橋さん:こちらの午前中が日本の夜中なので、午前中は誰からも連絡が来ません。その間は自分の仕事に集中できるよさがあります。ただ、ミーティングがあるときは、日本の午前10時が今のサマータイム期間はこちらの18時なので、23時頃までは仕事の打ち合わせが入ることはあります。
子どもが小さい場合は、学校への送り迎えをする必要があるので、都合がつきやすい仕事をする必要があると思います。言葉の習得の面で言うと、子どもがより小さいうちに来た方が早く身につくとは思いますが、親の大変さはあるかもしれません。
── 日本にいたときと比べて生活の面で変わったことはありますか。
高橋さん:日本では、仕事の忙しさから、なるべく家事に時間を使わないようにスーパーのお惣菜などに頼っていました。家でのご飯が手抜きになってしまっても、学校や学童で栄養のある食事をとっているだろうから、「まぁいいか」と思うようにしていたんです。でも、こちらではほぼ自炊です。お惣菜も脂っこいものが多いですし、値段も高いです。息子が成長期でスポーツをしていることもあって、「試合の前はこういったものを食べさせよう」と体のことを考えた食事づくりを意識するようになったのは良かったと思います。
── 最初は1年の予定で留学したそうですが、今後はどう考えていますか。
高橋さん:ビザが出る期間が1年だったのでそう設定して、「とりあえず行ってみるか」という気持ちでフットワーク軽く来ました。これまで長期で海外に住んだこともありませんでしたし、私も息子もカナダに来たこと自体が初めてでした。
最初は、今後についてはしばらく様子を見ようと思っていたのですが、9月から学校が始まって、12月には来年度の学費の支払いの連絡が来たので、来年度のことをすぐ決めなくてはならなくなりました。結果、早々に期間を延長することを決めた形です。息子も、カナダが気に入ってこちらで野球も続けていきたいそうなので、しばらくここにいたいと言っています。物価も高くなっているので、私の仕事がこの先も続けられて、ビザがおりる限りは、留学生活を続けたいと思っています。
取材・文/内橋明日香