専門家「不登校が増えるのは当然」
教育評論家の親野智可等さんは、不登校の子どもが増えている背景をこう考えています。
「時代に合っていない、一斉集団主義の学校に違和感を覚えて馴染めない子どもたちが増えているのは当然のことだと思います。私は、学校に通えない子どもたちが、日本の教育のシステムを変えるべきだと教えてくれているように感じています。これだけ多様性が叫ばれているのに、日本の学校は変わっていないままです。公立校の改革と、自分たちで生き方を探り始めている子どもたちへの支援を同時にしていく必要があると思います」
親野さんは、学校の問題点をこう指摘します。
「いままでは、全員が同じ時間に、同じ場所で、同じことを同じペースですることが重要視されていました。それは、歯車的な人間を作るために一番いいからです。日本では明治維新以降、近代化と富国強兵を急ぎました。その場合、上が言ったことを確実に実行する歯車的な人間が大量に必要な時代で、学校はそれを前提に作られていました。
昭和の高度経済成長期もそれでなんとかなってきた部分はあったのですが、これだけ多様な価値観が重要視されている平成、令和の時代にこれではもう、時代錯誤もいいところです。他の先進国では、すでに少人数制に移行していて、学校ではその子のレベルに合った内容を学んでいます。みんなと同じことを同じようにするのではなく、他の人が考えないようなアイディアや独創的な道を切り開いていける人材が必要とされている世の中で、日本の学校のシステムは変わっていないままなのです」
親野さんは、都がスタートさせるフリースクールなどへの助成を賞賛したうえで、もっと支援の幅を広げ、全国的に行う必要があると感じています。
「ホームラーニングやフリースクール、習い事などの支援にも力を入れて、その子の興味関心・資質・ペースに沿って伸びていけるようにサポートすることが大事です。それに、これからの時代は、ジェネラリストよりスペシャリストが活躍する時代になるので、そういう意味でもそれぞれの子どもの個性を伸ばす方向で進めるべきです。
とにかく、言われたことをやることより、自分がしたいことを自分で見つけていける能力が大事です。学校の環境に馴染めない子どもたちの方が、そういう能力が高いともいえるので、そういう子たちのサポートを充実させる必要があると思います」
それと同時に、親野さんは公立校の改革は不可欠だと話します。
「先生が日々の業務に追われて大変だというのは日本中の誰もが知っていることになっていますよね。公立校への不信感から、首都圏では中学受験も盛んになってきています。子どもも親の価値観も多様化している中で、それに対応できる多くの教員が必要です。
学校の先生が、目の前の子どもたちに向き合っていける余裕を作れば、いじめも発見しやすくなりますし、学力も上がります。公立校への信頼感が高まれば、子どもを産み育てることへの不安も減少するので少子化対策にもなります。日本のような資源の少ない国にとっては教育こそが本当に大事な基盤です。本気でここに予算を割いてほしいと思います」
PROFILE 親野智可等さん
教育評論家。本名、杉山桂一。長年の教師経験をもとに、子育て、しつけ、親子関係、勉強法、学力向上、家庭教育について具体的に提案。『子育て365日』『ずるい子育て』など著書多数。Instagram、Threads、X、YouTube、Blog、メルマガなどで発信中。オンライン講演をはじめとして、全国各地の小・中・高等学校、幼稚園・保育園のPTA、市町村の教育講演会、先生や保育士の研修会でも大人気となっている。
取材・文/内橋明日香
※この記事は、CHANTO WEBとYahoo!ニュースによる共同連携企画です。