東京都は今年度から不登校の子どもを対象にフリースクール等の費用を月2万円の助成を行います。助成より経済的な負担が軽減される一方で、不登校の子どもを持つ家庭の課題を探りました。
不登校の数は毎年増え続け
東京都は今年度から、都内の小中学生を対象に、フリースクールの利用料などを月2万円を上限に助成を行うことを決めました。東京都によりますと、都内の公立小中学校の不登校の数は統計を取り始めた平成21年度以降、毎年増えていて、令和4年度では2万6912人が年度内に30日以上、学校に通えていないといいます。
都の教育委員会が、令和5年4〜9月に行った不登校の児童・生徒を持つ保護者のべ921人を対象した調査では、フリースクールの利用料の平均は月額4万3004円で、およそ6割が家計への負担感があると回答しています。
助成が始まることで経済的な負担が軽減される一方、フリースクールを利用することも難しいと感じている方もいます。
都内在住で、小学5年生のお子さんを持つ佐藤絵里さん(仮名)。小学3年生の春頃から子どもが登校できない日が増えたといいます。
「2年生の頃から、習い事に行かなくなったことが兆候としてありました。3年生になってからは、図工や音楽などの好きな教科だけ、保健室やスクールカウンセラールーム、放課後など、学校もいろんな方法を示してくれて、五月雨式に登校していたのですが、4年生になるとそれもできない日が増えていきました。『今日は行けるかも、やっぱりダメだった』という日々の中、食べていない給食費が毎月口座から引き落とされるのは、悲しかったですね。
支援が始まるのはありがたいことですが、利用するかはわかりません。大人は、人とのかかわりが減ったり、勉強が遅れたりすることを心配して、学校がダメならフリースクールと考えます。ですが、うちの子の場合、いじめにあったわけでも、勉強についていけない訳でもなく、学校は“嫌だけどやっぱり行きたい場所”という存在のようなんです。
フリースクールの資料も見せて誘うのですが、いくら励ましても気持ちを向けてはくれません。フリースクールに行くことで自分が落伍者になるようなイメージもあるようでした」
佐藤さんは、フリースクールのほか、教育支援センターなどの施設も調べたそうですが、結局足を運べなかったといいます。
「今は、民間のフリースクールも増えていますし、自治体が運営する施設や、インターネット上の仮想空間、メタバースで不登校の子たちの居場所作りをするような動きもあります。ネットで調べてもたくさんの選択肢が出てくるのですが、結局子どもの心は動かず、家で過ごしています。
それに、明日は学校に行けるかもしれないという希望を持って本人も生活しているので、別の場所に通うとしても、日程を決められないんです。そもそも緊張しやすい子なので、またいちから新しい場所に通うということ自体、ハードルが高いのもあります。結論が出ないまま、時間だけが過ぎる日々です。うちは不登校の原因がはっきりせず、学校にもフリースクールにも行けずにいますが、同じような方は少なくないのではないかと思います」
佐藤さんのお子さんは、カウンセリングを受けながら週3日、中学受験対策の塾に通うようになったといいます。塾は月に5万円ほどかかるそうです。
「上の子が中学受験をしたこともあって、家庭内でも受験が当たり前という雰囲気がありました。本人も勉強は楽しかったようですが、だんだん集団での学びがしんどくなっていったようです。結局半年ほどで塾からも足が遠のきました。この2年間、学校側はいろいろ配慮してくれましたが、それでも行けません。先生方がお忙しいのはわかっているので、配慮してくださったのに行けないと、親子ともに申し訳ない気持ちになります。
学校には他にも不登校の子がいるので、学校のカウンセラーの先生も予約が埋まっていることが多く、もっと気軽に相談ができるようになってくれたらいいなと思います。フリースクールが堂々とした選択肢になるためには、学校のあり方や社会の価値観が変わらないとすぐには難しいと感じています」