匿名掲示板『2ちゃんねる』の開設者でもあり、論破王の異名を持つ西村博之(ひろゆき)さんの妻であり、Webディレクターとして活躍するゆかさん。著書『転んで起きて 毒親 夫婦 お金 仕事 夢 の答え』(徳間書店)では、ネット黎明期からパソコンを使いこなしていたエピソードも語られていますが、過去には予想だにしないSNSでの炎上や殺害予告まで、ヒヤッとする経験も…。とはいえ、そんな経験から学んだことも多いといいます。
『2ちゃんねる』で誤情報が出回り…自分の甘さを痛感
── 最近、子どもを題材にした親の自分本位なSNS発信を諌める声が上がっています。成長した子ども自身からの「書いてほしくなかった」という告白も話題になりました。そのようなトラブルを防ぐにはどうすればいいでしょう。
ゆかさん:自分自身に関することを書くのは本人の自由だと思います。でも家族はまた別の人格だから、それに対してなんでも書くのは違いますよね。たとえば、未成年の子どもの写真をネットに上げるのは、個人的にはデメリットのほうが多いのではないかと思います。
Xのフォロワーが数十人しかいないアカウントの場合は、閉ざされた世界なので公開はされていても実際に見ている人は少ないけれど、画像がネット上で公開されている以上は、誰が見ているかわからない。そのリスクだけは自覚しておくべきだと思います。
── ゆかさんも、ネット上でトラブルなど経験されていますか。
ゆかさん:過去に『2ちゃんねる』で炎上を経験しています。もともと私とは関係のない話題だったのですが、結果的に巻き込まれて。当時のSNSのアカウントもすべてさらされ、揚げ句の果てには、実家の住所や小学校や中学校といった個人情報まで書かれてしまったんです。
当時はまだSNSフォロワーは100〜200人くらいで、私の危機管理意識も甘かった。たまたまインスタに友人の子どもを抱っこしている写真をアップしていたのですが、それが私の隠し子として、間違った情報が拡散されたんです。その勢いはすさまじく、すぐに『2ちゃんねる』やいろんな画像共有サイトに転載され、友人の子どもの画像がネット上に出回ってしまいました。誹謗中傷もたくさん書かれて…。そんな経験から、ネットでは何が起こるかわからないということは痛感しています。
── たしかにフォロワー数が少ないと、身内しか見ていないと思って危機感が薄くなってしまうかもしれません。
ゆかさん:「自分にはトラブルは起こるわけがない」って考えている人が多いですよね。私の場合は、Xのフォロワー数が18万人ほどいるので、二次的に拡散させてしまわないように細心の注意を払っています。友人の子どもなど他の人の画像は載せないのはもちろん、「いいね」をすると「ゆかさんがいいねしました」と表示されるので、友人の投稿にも安易に「いいね」をしないようにしています。
── SNSを個人の日記のように軽く考えている人もまだ多い印象です。
ゆかさん:自分の発言や投稿で何か起きるかもしれないという自覚は、誰しも持っていたほうがいいと思います。今は、子どもを遊ばせている写真の背景からここはどこの公園だとか簡単に特定できてしまったりするから…難しいですよね。個人情報保護の観点からすると、自分が承認した人しか見られない鍵つきのアカウントを活用するのがいいんじゃないかなとは思います。
殺害予告を受け警察に相談したことも
── ネット上の誹謗中傷も問題になっています。そのようなトラブルに遭った場合、ゆかさんはどう対処されましたか。
ゆかさん:以前、『2ちゃんねる』で殺害予告をされたことがあり、そのときは警察に被害届を提出して、犯人は逮捕されました。『だんな様はひろゆき』(2021年)を連載していたときは、特に誹謗中傷がひどくて、毎日のようにXのフォームから報告していましたね。悪意のあるアカウントは即座にブロックしてミュート。これを徹底したら、攻撃される機会はかなり減りました。
── ネット上での攻撃は「スルーよりも対処」がいいのでしょうか。
ゆかさん:ネット上で攻撃をしてくる人って、何も言い返してこないと思ってやっている気がします。私は嫌なことをされて黙っているタイプではないので(笑)、それ相応の対応をするから、攻撃する気が失せちゃったのかも。もしネット上で見過ごせない攻撃をされたら、泣き寝入りはしないほうがいいと思います。きちんと管理者に通報すればそのアカウントは凍結されると思うので。
私自身、最近YouTubeも始めたので、あらためて気をつけなければと。ひろゆき君もいろんな目に遭っているので…適宜参考にしながら(笑)マイペースでやっていきたいと思っています。
PROFILE 西村ゆかさん
1978年生まれ。東京都出身。インターキュー株式会社(現GMOインターネット株式会社)、ヤフー株式会社を経てWebディレクターとして独立。2015年よりフランス在住。著書に『だんな様はひろゆき』(朝日新聞出版)、『転んで起きて』(徳間書店)。X(@uekky)で日々の気づきを積極的に発信中。
取材・文/池守りぜね 画像提供/西村ゆか