1年で芽が出なかったら帰ってこい
── 少し話は遡りますが、中越さんが芸能界のお仕事をはじめたことは、ご両親には事後報告だったそうですね。
中越さん:事務所が決まったあとに報告しましたが、すぐには納得して貰えませんでした。そもそも両親は地元の大学に進学して欲しかったところ、私がどうしても東京に行きたいと言ったので私の気持ちを尊重してくれたんです。芸能界の仕事も心配そうでしたが、1年やって芽が出なかったら専門学校を卒業するタイミングで佐賀に戻ってこいと言われました。
この話を事務所にすると、社長が気にしてくださって、わざわざ佐賀の実家まで足を運んでくださったんです。社長と両親で話をしましたが、それでも1年という期限つきでどうにか受け入れてくれました。
── 結果的に『ViVi』のモデルや『王様のブランチ』など次々に活躍されて、ご両親との約束はクリアできたのでしょうか。
中越さん:両親との約束はどうにかクリアできました。でも、『王様のブランチ』の出演が終わってからしばらく仕事がない時期が続いたんです。
── どれくらいの期間、お仕事がなかったのでしょうか?
中越さん:半年くらいですね。『王様のブランチ』に出ているときにドラマの出演も決まっていたのでしばらくはよかったんです。しかしドラマの撮影が終わってしまうと次のお仕事が決まっていない。ここからまたオーディションを受ける日々に戻っていきました。
週に何回もオーディションを受けましたが、受けても受けても決まらない。スケジュールが真っ白な日が続いていくと、仕事が埋まらない恐怖も感じましたし、自分はこの業界は向いていないのかなって考えるようになっていって。もう、このオーデイションを受けてダメだったら佐賀に戻ろう!そう思って受けたオーディションがNHK連続テレビ小説『こころ』でした。
『こころ』の影響は大きかったです。主演に抜擢していただいたことをきっかけに、また次のお仕事にも繋がっていきましたし、何より両親がとても喜んでくれました。元々両親は朝ドラが好きで、そこに私が出るということでやっと安心して応援して貰えたような。
今でもとても印象深いお仕事のひとつですし、周りのスタッフさんにも恵まれて今もお仕事ができています。
PROFILE 中越典子さん
1979年生まれ。佐賀県生まれ。『ストレートニュース』(日本テレビ系ドラマ)で俳優デビュー。TBS『王様のブランチ』に出演後、2003年NHK連続テレビ小説『こころ』で主演を務める。現在放送中のフジテレビ「婚活1000本ノック」に出演中。以降映画やドラマに出演しながら現在は2児の母としても活躍。
取材・文/松永怜 写真提供/中越典子