「明日のプレゼンのために」「資料をなんとか今晩中に」と、徹夜をしてがんばったのに翌日はグダグダに。コーヒー多めでカフェインはとったつもりなのに…。「それは誤解です」と、医師の工藤あきさんはいいます。

徹夜明けのカフェイン摂取で仕事はできるのか?

── 先日、仕事が立て込んでいて、夜遅くまでコーヒーを何杯も飲んで粘ったのですが、思ったほどはかどりませんでした。翌日は寝不足でつらく、ムリせずに眠ったほうがよかったのかな、とも思います。

 

工藤先生: 仕事や勉強をがんばりたいときに、カフェインを含むエナジードリンクやコーヒーを飲んで眠気を覚ますという方は多いですね。しかし、カフェインの力を借りて眠らずに取り組んでも、成果が上がるとは限らないかもしれません。

 

ブロッコリーのイメージ写真
「疲れやストレス」を感じたときにいい食べ物1(ブロッコリー)

── と、言いますと?

 

工藤先生: アメリカで次のような研究結果があります(※1)。学生を集めて、2通りのテストを行わせました。ひとつはモニターに表示があったらなるべく早くマウスをクリックする単純なテスト、もうひとつは表示される色や数字によって回答を変える必要のある、複雑で頭を使うテストです。

 

テストの後で、学生を「徹夜をする・しない」と「翌朝カフェイン200mg(マグカップのコーヒー2杯分相当)を摂取する・しない」で4つのグループに分けました。

 

つまり、①徹夜して翌朝カフェインを摂取しない、②徹夜して翌朝カフェインを摂取する、③睡眠をとってカフェインを翌朝摂取しない、④睡眠をとって翌朝カフェインを摂取する、の4グループとなります。

 

そして翌日に、前日と同じテストをして成績を比べたところ、①のグループは2つのテストとも前日よりも正答率は下がりました。さらに③④の睡眠をとったグループよりも悪い成績になりました。

 

── 睡眠不足でカフェインもとっていない状態のままテストを受けているわけですから、納得の結果だと思います。

 

工藤先生: では、徹夜をしてカフェインをとった②のグループはどうなったのというと、単純なテストでは、前日からさほど成績は落ちることなく、③④ともそう変わらない結果でした。

 

しかし、複雑なテストでは、前日と比べて明らかに成績が落ちたのです。つまり、睡眠不足のときにカフェインを摂取すると、単純な作業であれば効果が期待できるけれど、頭を使う複雑な作業では良いパフォーマンスが期待できない結果になりました。

ゴクゴク飲める?エナジードリンクには注意が必要

── せっかくカフェインを摂ってがんばっても、仕事や勉強がはかどらない、最悪、ミスを招く可能性もあるということですね。では、複雑な作業に取り組むときは、どうするのがよいのでしょうか?

 

工藤先生: 複雑で頭を使う仕事や勉強には、やはり睡眠をとるのが一番です。脳の疲れがリセットされ、集中力も高まります。また、眠ることで記憶が整理されて脳に定着します。15〜30分程度の仮眠でもスッキリするので、テスト勉強なども上手に取り入れるといいでしょう。

 

また、単純な作業だとしても、カフェインを摂り続けてムリをするのは禁物です。カフェインは眠気を覚ましてはくれますが、睡眠の代わりになっているわけではなく、疲れは蓄積されていきます。仮に徹夜などムリをしても、その後は睡眠や栄養補給をして休息するようにしてください。

 

── カフェインは過剰摂取に注意したほうがいいとよく言われますね。

 

工藤先生: 適切な量であれば眠気の解消や頭痛の軽減、むくみ予防といったメリットがありますが、過剰に摂取すると心拍数の増加やめまい、興奮、イライラや不安などの精神的な面、不眠をもたらすこともあります。

 

── どれくらいの量ならば摂取しても問題ないのでしょうか?

 

工藤先生: カフェインの耐性は個人差が大きいこともあり、日本では許容量を明確に設定されていませんが、カナダでは1日あたり18歳以上の大人が400mg、妊婦は300mg、18歳までの子どもは体重1kgあたり2.5mgとされています。

 

コーヒーだと150mlあたり90mg、エナジードリンクでは製品1本あたり約36〜150mg、その他にも緑茶や紅茶、チョコレート、薬などにも含まれています(※2)。

 

とくにエナジードリンクは、ジュース感覚で飲めて子どもでも手に取りやすいのですが、1本で子どもの許容量を超えてしまうことも。

 

子どもや妊婦はカフェインの代謝に時間がかかり、体内に長時間とどまります。不安を感じたり、眠れなくなったりという悪影響が出ないためにも、なるべく控えることをおすすめします。

ビタミンCでプレッシャーやストレスに打ち勝つ

── ここぞという大事な場面で力を発揮するには、やはり睡眠が欠かせないことはわかりました。そのほかに、簡単にできる方法はありますか?

 

工藤先生: 仕事や勉強でがんばるときにはプレッシャーやストレスを感じやすくなると思います。それに対抗するには、ビタミンCを積極的にとるのがおすすめです。

 

ストレスを感じると、身を守るために「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌され、そのときにビタミンCが大量に消費されます。

 

体内のビタミンCが少なくなるとストレスへの耐性も弱くなって集中力も落ちますし、免疫低下で体調も崩しやすくなるので意識的に補給しましょう。

 

とくに起床時はコルチゾールの分泌がもっとも多くなるため、睡眠前にビタミンCを摂りましょう。朝の目覚めを促して1日のリズムが整いやすくなります。

 

── 睡眠とビタミンCの合わせ技で、ストレスや疲れをためにくい体をつくるわけですね。

 

工藤先生: また、ビタミンCは汗や尿としても排出してしまうので、一度に摂取するのではなく、こまめにとるように心がけてください。イチゴや柑橘系のフルーツのほか、赤ピーマンやブロッコリー、ゴーヤなどに多く含まれています。

 

根を詰めてやらなければいけない場面がときにはあるかもしれませんが、そのせいで体調を崩しては本末転倒。睡眠や栄養をとって心身ともに健康を維持していきましょう。

 

PROFILE 工藤あきさん

消化器内科医・美腸・美肌研究科。一般内科医として地域医療に貢献する傍ら、腸活×菌活を活かした美肌・エイジングケアにも尽力。テレビ、本、雑誌などメディア出演多数。2児の母。

 

取材・文/大浦綾子

 

(※1)Caffeine selectively mitigates cognitive deficits caused by sleep deprivation. Stepan ME, et al. J Exp Psychol Learn Mem Cogn. 2021 May 20.

(※2)食品安全委員会「食品中のカフェイン」ファクトシートより算出