ご長寿の町として知られる京都府・京丹後市では、100歳以上の人の割合が、全国平均のなんと3倍!その理由は、この土地独自の食生活にあるようです。いったいどんな食事をしているの?その実態をまとめた『NHKあさイチ 2週間で変わる!整う、「腸活」』が話題となっています。
カギを握るのは「酪酸」!?京丹後市の長寿のヒミツ
男性の世界最高齢記録保持者である木村次郎右衛門さんも京丹後市の出身で、116歳という世界記録は今も破られていません。
この京丹後市で地元の大学と病院が連携し、京丹後長寿研究が行われています。ご長寿の方々の協力のもと、体のすみずみまで検査し蓄積した膨大なデータから、研究チームがもっとも注目しているのが、便の中の腸内細菌です。
研究チームによると、京丹後市に住む人の腸内には、京都市に住む人と比べ、短鎖脂肪酸の一種である「酪酸」を生み出す菌の割合が1.7倍も多く生息していたそう。専門家たちは、ご長寿たちの日々の食事に秘密があると考えています。京丹後市では、昔から発酵性食物繊維を豊富に含む食事をとっていたことが判明したのです。
101歳の誕生日を迎えたばかりの田宮彌三郎さん(※取材当時)に、ふだんの食事を見せてもらうと、腸の入り口付近で発酵を促す根菜類や豆類を豊富にとっていました。しかも、今の日本人にもっとも不足しているとされる、腸の真ん中から出口付近で発酵を促すもち麦も日常的に食べていたのです。
京丹後長寿研究を続けてきた京都府立医科大学大学院教授の内藤裕二さんによると、いかに食物繊維の多い主食をとるかということが重要なポイントだそう。
「もち麦などは非常に発酵しやすく、とてもいい。発酵で生じる短鎖脂肪酸がさまざまな病気予防、炎症抑制、免疫力アップにつながるとわかってきていますから、健康長寿につながると予測できます」(内藤さん)
さらに京丹後市は海も山もあり、もともといろいろな種類の食材をとる習慣があるため、自然と発酵性食物繊維がとれていたのではないかと内藤さんは言います。
最近の研究では、食物繊維を多く摂取すると死亡率が下がるということも分かっています。食生活と長寿の関係は、今後もさらに明らかになっていくでしょう。
■食物繊維を多く含む食品の例(100gあたり)
【海藻】
ひじき3.7g、こんぶ8.7g、わかめ5.8g
【豆類】
大豆8.5g、インゲン豆13.6g、小豆8.7g
【きのこ】
シイタケ4.8g、エノキダケ4.5g、マッシュルーム3.3g
【芋類】
じゃがいも9.8g、里芋2.8g、さつまいも2.3g
【穀類】
玄米1.4g、大麦(押し麦)4.2g、全粒粉パン4.5g
【果物】
リンゴ1.9g、ブルーベリー3.3g、キウイフルーツ2.6g
出典:『日本食品標準成分表2020 年版(八訂)』
免疫力にメタボ…私たちは腸内細菌にコントロールされている!?
腸内細菌を研究する京都府立医科大学大学院教授の内藤さんによれば、健康には腸内細菌の多様性が必要だといいます。
「どの菌がいいというのではなくて、多様性が大事なんです。人間の社会と同じで、いろいろな腸内細菌がいるほうがいい。腸内細菌が多様であれば健康長寿でいられるし、逆に菌の種類が減って寂しくなってくると、病気のリスクが高まる。健康をめざすには、多様な腸内細菌をいかにつくるかがテーマだと私は思います」
ところが、ちょっと気になる腸内細菌の真実も教えてもらいました。じつは腸にすみつく腸内細菌の種類は、3歳までに決まってしまうというのです。
これに関連するのが、後述の「腸年齢セルフチェックシート」の「-1歳」のチェック項目にある「田舎、地方の出身である」と「3人以上のきょうだいがいる」という項目です。
母親の胎内にいるとき、赤ちゃんの腸内は無菌状態。生まれたあと、いろいろな人と触れ合い、いろいろなものを食べ、空気中のいろいろな菌を吸うことで、腸内に細菌がすみついていきます。そうやって〝腸内細菌のレギュラーメンバー”が決まるのが3歳ごろ。あとはもう新しい菌がすみつくことはありません。
「都会のきれいなマンションよりも、極端に言えば牧場で育つほうがいいかもしれない(笑)。大家族や自然豊かな環境で育った人のほうが、3歳までにたくさんの菌をもらえ、腸内細菌が多様になるということがかっています」
とはいえ、3歳を過ぎたら腸内環境は変えられないということではありません。腸内細菌の固定メンバーが決まると、食べ物からとる菌がすみつくことはできませんが、腸内を通りながら働いてくれます。
ヨーグルトなどで乳酸菌をとると、その菌は腸内を通るときに、いい働きをたくさんして、最後に出ていくのです。「ですから、生きた菌を含む食べ物は、毎日とるのが大切なんです」
そして腸内細菌のエサである食物繊維をとることで、もともといる菌も、食べ物から入る菌も、みんな元気になって数を増やしていきます。
「食物繊維により持久力が上がるなどの働きだけでなく、メタボの予防や免疫の維持などにもかかわることがわかってきています。ですから、もしかすると私たちは、腸内細菌がつくる短鎖脂肪酸によってコントロールされているということなのかもしれません」
腸内環境は変えられる!まずは意識することから
内藤さんによると、腸内環境は、がんばれば2週間で変わるそう。食物繊維と生きた菌をしっかりととることで、腸内環境は変えることができます。「1日にとりたい食物繊維は20g、病気の予防のためには25gが目安です」
忙しい毎日でも、本気で腸内環境を整えたい!という人のために、内藤さんが毎朝飲んでいるという食物繊維たっぷりのスムージーのレシピを教えてもらいました。
このレシピのポイントは、いろいろな種類の食物繊維がとれるところ。「続けることが大事です。私は5年くらい続けていて、ラジオ体操のあと、朝食前にスムージーを飲むのが毎日の日課です」。手軽に食物繊維がとれるお助けドリンクとして、ぜひおためしを。
腸内細菌の専門家・内藤裕二さん直伝!スペシャルスムージーレシピ
内藤さんは、食物繊維たっぷりの自家製スペシャルスムージーを毎朝飲んで、腸内環境を整えているそう。
〈材料〉
豆乳……200㎖
バナナ……1/2本
食物繊維サプリ(水溶性食物繊維の粉末)……5g(※食物繊維の量が5g分)
青汁粉末……大さじ1
はちみつ……適量
(お好みで)
えごま油……小さじ1
きな粉……小さじ1
〈作り方〉
材料をすべて入れてミキサーにかけるだけ。
〈1人分の栄養価データ〉
食物繊維約10g 287kcal 塩分:0g 脂質:8.5g
あなたの腸は何歳?腸年齢セルフチェックシート
普段の食事や生活についてのチェックシートであなたの腸年齢を確認してみましょう。
腸にいい生活習慣や環境の項目については、チェックの数だけ1歳若返ります。腸によくない生活習慣の項目にチェックが入ると、その数だけ1歳年をとります。合計すると、実年齢からプラス・マイナス何歳かがわかります。
PROFILE 内藤裕二さん
京都府立医科大学大学院医学研究科教授。腸内細菌を研究して40 年。腸内微生物・消化器・抗加齢医学が専門。消化器内科医として最新医学に精通し、各地で講演も行っている。
※本記事は、『NHKあさイチ 2週間で変わる! 整う、「腸活」』から内容を抜粋、再編集したものです。