ドラマ化されたコミック『CAとお呼びっ!』などでおなじみの人気漫画家・花津ハナヨさん。コロナ禍で離婚、シングルマザーとなり、婚活マッチングアプリを初体験してみたところ、予想外で驚くことばかりだったと言います。(全2回中の2回)

 

人気漫画家・花津ハナヨさん
人気漫画家・花津ハナヨさん

マッチングアプリで「友達の元カレ」と出会う

── 離婚をされて、マッチングアプリに登録されたそうですね。

 

花津さん:シングルマザーの婚活ラブコメディ『シンママ(42)、アプリで運命の恋を見つけます。』を今連載しているのですが、その取材も兼ねて始めました。私もシングルになりましたし、堂々と新しい出会いを求めよう!と思って(笑)。1年くらい登録して、今はもうやめてしまったんですけど、やってみたら思った以上におもしろかったし、奥が深かったです。20代半ば~60代まで幅広い年齢層の人と会いました。1回だけ会った方もいれば、回数を重ねた方もいいます。

 

── どんな方がいらっしゃいましたか?

 

花津さん:年齢をひと回りくらいサバ読んでいる方とか、あとは結婚しているのにシングルだと偽っている人は本当にいっぱいいました。アプリ上で会話している時は「シングルです」と言っていたのに、会って話しているうちに辻褄が合わなくなって「もしかして結婚されてます?」と聞いたら、「あ、はい…」と認めてきて「えーっ?」と。アプリで知り合った男性にその話をしたら「女性も既婚者が多いよ」と言っていました。

 

── 花津さん自身は「再婚相手を探すぞ!」という意気込みで会っていたのですか?

 

花津さん:いや、結婚はもう懲りたので(笑)、彼氏ができたらいいな、というつもりでやっていました。驚いたのが、最初にマッチングしたのが友達の元カレだったんです。その方は、私のことを元カノの友達だと気づいてて、私に「いいね」ボタンを押してくれていました。なので、「最近どう?」「そっちはどう?」なんていう会話から始まりました。その方に「マッチングアプリって実際どう?」と聞いたら「全然ダメ。仮想通貨を勧めてくる女の人しかいないよ」と返ってきました(笑)。

 

あとは、私の友達の友達や、元カレの友達など、けっこうつながりのある人とマッチングする機会があったので、そこはおもしろかったです。会ってからSNSでつながると共通の友人がいたりして「もしかして元カレの友達?」と気づくような感じでした。世間は狭いですよね。

 

『シンママ(42)、アプリで運命の恋を見つけます。』より(c)花津ハナヨ/講談社
『シンママ(42)、アプリで運命の恋を見つけます。』より (c)花津ハナヨ/講談社

60代・70代からしか「いいね」が来ない

── 婚活用のマッチングアプリを使ってみて難しいなと思ったところを教えてください。

 

花津さん:私自身、「40代」で「子どもが2人」いて、「収入が少ない」女性という低いスペックしかない。その程度のスペックだと、まっとうなアプリの場合は「いいね」がほぼ来ないということがわかりました。

 

だいたい、自分より10歳以上年上の男性からしか「いいね」が来ないんです。だからアプリを立ち上げて、60代や70代のおじさまたちから「いいね」が来ているのを見ると力が抜けちゃいました。「あぁ、私は同年代からは需要がないんだ…」という現実を突きつけられましたね。

 

アプリを始めた当初は、自分がどういう人からニーズがあるのかまったく想像もつきませんでした。もう子どもが産めるわけじゃないし、美貌があるわけでもない、お金も持ってない、となると結婚相手としては全然ダメだなと痛感しました。

 

がんばってこちらから同世代の男性に「いいね」を押して、マッチングして会っても、「シングルだからどうせお金目当てなんでしょう?」ということを遠回しに言われたりして「そんなつもりはないんだけどな…」とせつなくなりましたね。

 

── けっこう傷つきますよね。

 

花津さん:傷ついたというより驚きが大きかったかもしれません。でも、そういうやり取りを経て、自分はまじめに結婚相手を探してるわけじゃないな、生活に潤いが欲しいんだな、というのを再確認しました。そこからは楽しくアプリを使うようになりました。お金を持っているかどうかはどうでもよくて、それよりおもしろそうな人、一緒にいて楽しい人を探そうと。

 

花津ハナヨさん
花津ハナヨさん

朝コーヒーを飲む「茶飲み友達」ができた

── 1年間マッチングアプリを体験した結果、彼氏はできたんでしょうか?

 

花津さん:知り合って、いい感じだなと思う方ができたのでマッチングアプリはもうやめました。実はその方も知り合いの知り合いだったんです。同年代の方。この年になってもそういう存在ができるんだなと。新鮮です。

 

── 子育てしながらデートの時間を捻出するのは難しいですよね。

 

花津さん:フリーランスなので、時間は調整しやすいです。デートといっても独身の頃と違って、朝カフェや近くの川辺で待ち合わせて、一緒にコーヒーを飲んでからお互い仕事に行くような感じで、茶飲み友達に近いかもしれないですね。

 

── 朝のコーヒータイムを一緒に過ごすのも楽しそうです。

 

花津さん:そうですね。なかなかこの年になって男性と1対1でゆっくり会ったりしゃべる機会がないですよね。特に私はフリーランスで会社員じゃないですし。1対1で話すなかで、人によっていろいろな考え方があるんだな、というのを感じたりするのも楽しいです。

 

PROFILE 花津ハナヨさん

はなつ・はなよ。漫画家。1994年「なかよし」(講談社)にてデビュー。代表作『CAとお呼びっ!』(小学館)は2006年にドラマ化された。現在、漫画アプリPalcyで『シンママ(42)、アプリで運命の恋を見つけます。』(講談社※電子コミック1巻配信中)のほか、『情熱のアレ 夫婦編』(白泉社)、『セカンドパートナー』(白泉社)を連載中。

取材・文/富田夏子 画像提供/花津ハナヨ