雑誌『CanCam』の専属モデルとして表紙も飾った仁香さん。しかし『CanCam』卒業後、ストレスで過食とダイエットを繰り返し、気づけば体重は13キロも増えてしまったと言います。(全3回中の1回)
毎日が合宿のようだったモデル時代
── モデルを始めたきっかけを教えてください。
仁香さん:高校生の頃、友だちが雑誌『プチセブン』の読者モデルに応募したんです。そのとき私も一緒に応募してくれて、読者モデルからモデルへと活動を始めました。短大に進学すると『CanCam』の専属モデルとしてデビューしました。モデルの活動は、当初、親から反対されていたんです。でも3年間努力し続け、雑誌の表紙を飾るようになると応援してくれるようになって嬉しかったです。
── 人気雑誌のモデルとして、どんな生活を送っていましたか?
仁香さん:通っていた短大にロケバスが迎えに来て撮影現場に移動したり、学校がない日はモデル仲間と集まって食事をして、翌朝また撮影のために皆で集まったりしていました。学生生活を送りながら仕事もしていたため、記憶がないくらい忙しかったけれど、毎日が合宿のようで本当に楽しかったです。
── 24歳で6年間務めた『Cancam』専属モデルを卒業されました。
仁香さん:年齢的に24、25歳で卒業するのが暗黙の了解だったんです。私自身も6年間専属モデルを務めたことでやりきった感もあり、1年間の休暇をとりました。休暇中は両親と過ごしたり、海外旅行を楽しんだり、好きなことが思いっきりできて充実した日々でした。
モデル時代は、体重や体型には気をつかいますし、髪型を変える時は事務所と相談が必要でした。モデルとしてみんなの憧れでいるためにも自己管理が求められ、常に気を引き締めている必要がありました。それに対して休暇中は、なんの制限もなくのびのびと過ごせました。
1年間で体重が13キロ増えて
── 1年間の休養後、再びモデルを再開されたそうですね。
仁香さん:『Oggi』や『Domani』を担当していた編集者さんから声をかけていただき、モデルの活動を再開しました。『CanCam』時代はやせてなきゃ服が着られない感じでしたが、『Oggi』や『Domani』でのモデル服は意外とサイズが大きくてびっくりしました。もうやせなくていいんだと思ったら、今度は気が緩んだのか焦りからのストレスなのか、過食とダイエットを繰り返し、最終的には減るどころか13キロも増加してしまったんです。
── 焦りとは?
仁香さん:モデル仲間はどんどん活動の場を広げているのに、私だけがひとり取り残されたような気分になってしまったんです。新しい仕事どころか体重が増えて仕事は減る一方。親からは「モデルばっかりしていないで早く結婚しなさい」「3年も頑張っているのに体型が戻らないなら、もう諦めたら?」と言われていました。彼氏もいない、結婚の予定もない、仕事もない。年齢も29歳で崖っぷちでした。
── その後、29歳でゲルマニウム温浴サロンを始めたそうですね。
仁香さん:当時、父が整骨院をやっていた関係でゲルマニウム温浴サロンを姉妹でオープンしました。私は経営にまつわること全てに携わりました。什器や備品の発注、スタッフ募集など、モデル時代とは違い、裏方的な仕事ばかりでした。でも、目の前のことを必死にやっていたら、だんだんとおもしろくなってきて。意外と自分に合っているのかもと思えてきました。
その後、ちょうど、世の中が温泉や都会の隠れ家、サロンブームになり、ゲルマニウム温浴サロンも注目を浴びるように。モデル時代の後輩たちが、私がやっていたサロンに通ってくれたこともあり、雑誌の取材などが一気に増えました。
── モデルから女性起業家へと華麗に転身したのかと思っていました。
仁香さん:モデルの仕事は大好きでしたが、いったん手放してよかったのかもしれません。増えた体重は、働いているうちに自然と元に戻り、私自身も女性起業家として注目されるようになりました。今は、サロンは閉めてしまいましたが、仕事の幅も広がりいい経験ができたと思います。
PROFILE 仁香さん
1975年生まれ。東京都出身。18歳から雑誌『CanCam』の専属モデルとして活躍。美容、アパレルブランドのコンサルティング、商品開発などにも挑んでいる。
取材・文/間野由利子 画像提供/仁香