1980年代、人気アイドルグループ・おニャン子クラブの衣裳として一大ブームを巻き起こしたアパレルブランド「SAILORS(セーラーズ)」。惜しまれながら2000年に閉店しましたが、再び脚光を集め、令和に復活を遂げました。80年代ブームを背景に、コロナ禍がきっかけになったそうです。社長兼デザイナーの三浦静加さんにお話を伺いました。

 

2014年5月と2014年12月にラフォーレ原宿でポップアップショップが登場
2014年5月と12月にラフォーレ原宿でポップアップショップが登場

コロナ禍に家族のためにつくった「マスク」に問い合わせ殺到

── オンラインショッピングサイトBASEで「セーラーズ」の商品が買えるようになったそうですが、復活のきっかけなどはあったのでしょうか?

 

三浦さん:「サンデージャポン」という番組から密着取材を受けていたときがあって。その頃、ちょうどコロナ禍に突入した時期で、娘と母が私がつくったマスクをつけていたんです。セーラーズのワンポイントが入ったものです。それをつけている姿をテレビで観た方たち500人くらいから、私のFacebookのDMに連絡が来たんですよ。「あのマスクが欲しい!」って。

 

最初は数量限定でSNSを通じて抽選し、当選者にプレゼントしていたのですが、次第に売ってほしいという問い合わせが殺到して。それでセーラーズのマスクを少しずつ販売し始めたのがきっかけですね。

 

問い合わせが殺到したマスクの配送準備の様子
問い合わせが殺到したマスクの配送準備の様子

── BASEではどのようなものを販売されているんですか?

 

三浦さん:これまでにトレーナーやスタジャンなどを復刻して、限定販売してきました。新たな試みではマスキングテープや養生テープ、NEW ERAとコラボしてキャップも作ったりと、あの頃にはなかったものなんかにも挑戦してきましたよ。

 

復刻するために、当時の職人さんや工場にお願いしたり、糸から染めたオリジナルの生地を使用したりとこだわっていて、大量生産はできないんですけどね。自分が納得できるちゃんとしたものをお届けしたいから、発売の予告を動画にして発信したり、デザインから発送までさまざまな作業もほとんどを私が一人でやっているんです。

 

令和に登場したアイテム。養生テープ
令和に登場したアイテム。養生テープ

── 復刻したアイテムが令和に買えると喜んでいるファンの方も多そうですね。

 

三浦さん:Facebookに「SAILORS FAN CLUB」というのがあるんです。おニャン子クラブのファンの方たちが「もっとセーラーズをたくさんの人に知ってもらいたい」と言ってきてくれてできたもので、今は1000人くらい会員さんがいらっしゃるんですよ。

 

当時からのコレクターやファンという方はもちろん、「昔は買えなかったけど大人になってやっと買えた」と言ってくださる方や、当時を知らないけどファンになってくれた若者もいたり、とにかく熱い方たちが集まっていて。

 

そこでアンケートを取って「こんな商品が欲しい」「あのときおニャン子が来ていたこの衣装を復刻してほしい」とか、意見をもらって、復刻発売を実現してきました。基本的にファンのみなさんのリクエストや声に応えてきた形ですね。

 

糸の色までこだわって当時の服を再現
糸の色までこだわって当時の服を再現

── 2021年には渋谷のMODIでポップアップをされて、約20年ぶりに渋谷にセーラーズが戻ってきたと話題になっていましたね。「憧れの商品を実際に手に取って見られる!」と駆けつけた方も多かったのではないでしょうか。

 

三浦さん:実はそれまでに2015年にラフォーレ原宿でポップアップショップをやったこともありましたが、MODIではさらにそれを超える、本当にたくさんの方が来てくれて。入店待ちに何時間も並んでくださったんですよ。びっくりしましたけど、こんなにセーラーズを愛してくれる方がいるんだと本当に感謝の気持ちでいっぱいになりましたね。

 

モスバーガーと50周年コラボしたアイテム
モスバーガーと50周年コラボしたアイテム

── 80年代ブームの影響もおおいにありそうですね。時代を象徴する伝説のブランドとして、セーラーズの人気をご自身も再認識するきっかけになったのではないでしょうか?

 

三浦さん:そうですね、遠方から来てくれたり、やっと買えたと喜んでくださったり、若い世代の方もたくさん来てくれました。また、セーラーズファンを公言してくれているタレントさんたちも足を運んでくれて。タレントさんたちも普段BASEで売り切れる前に購入してくれたりしているんです。

 

テレビやラジオSNSなどで、自分のセーラーズの思い出を語ってくれたりするのも本当に嬉しいです。買いに来たスタイリストさんで「セーラーズに憧れてこの業界に入った!」なんて言っていただいたりして、感激しました。

 

NEW ERAとのコラボキャップを被る三浦さん
NEW ERAとのコラボキャップを被る三浦さん

── 三浦さんが起業して50周年ということで、モスバーガーとのコラボ、上野のパンダとのコラボもあったそうですね。

 

三浦さん:モスバーガーとセーラーズが、それぞれ創業50周年を迎えコラボレーションが実現しました。そして上野のジャイアントパンダが来日して50周年ということでもコラボが実現したんです。どちらもコラボアイテムのイラストは私が筆を使って書きおろしたものなんですよ。

 

上野のパンダ来日50周年のコラボ商品
上野のパンダ来日50周年のコラボ商品

19歳で江古田にジーパンのお店を出して早50年。今70歳ですけど、世界には103歳のデザイナーがいるって聞いて、じゃあ私はそれを超える104歳の記録を目指さないといけない、と目標を新たにしているところです。

 

PROFILE 三浦静加さん

「セーラーズ」社長兼デザイナー。19歳で起業し、東京・江古田でジーンズショップをスタート。1984年、渋谷に「セーラーズ」をオープン。人気アイドルグループ・おニャン子クラブの衣装としてセーラーズが採用され一大ブームに。1999年に出産。ハンディキャップを持つ娘との生活に専念するべく2000年に閉店。近年根強いファンの声もあり復活を遂げ、現在はオンラインサイト『BASE』で不定期に商品を販売している。

取材・文/加藤文惠 画像提供/三浦静加