TBSアナウンサーとして「サンデー・ジャポン」などを担当していた海保知里さん。今年からインスタグラムに投稿しているイラストや漫画が「おもしろい」と話題です。47歳にしてイラストに挑戦した背景とは。(全4回中の4回)

「人の目を気にした生き方はやめよう」と思えた

── 今年の3月から「30日チャレンジ」と題し、インスタグラムでイラストの連続投稿に挑戦されました。きっかけはなんだったのでしょうか?

 

海保さん:最近はデジタルイラストを描く人が増えましたが、私がデジタルイラストを描き始めたのは20年ほど前と、かなり早かったんです。TBS時代から担当していた雑誌の連載の一環で、ワコムのペンタブレットをいただき描き始めました。

 

イラストを描くのはもともと好きだったので、ペンタブを使ってTBSのアナウンサー通信(アナウンサーの公式サイト)にイラストを描いたり、ブログに載せたり、2016年に始めたインスタにも時折イラストを投稿したりしていました。

 

イラストに本腰を入れようと思った大きなきっかけは、コロナ禍が明けたことと、子どもの成長です。コロナ禍の3年間は独特の閉塞感から気持ちが落ち込みがちで、やってみたいことがあっても「こんなことしたら恥ずかしい」と諦めていました。でも、コロナ禍が明けて気持ちが回復するにつれて、「人の目を気にした生き方はやめよう」と吹っ切れていきました。

 

ちょうどそのころ、子どもたちが小学校高学年に差し掛かり、「そろそろ自分がやりたいと思えることをしたい」と考えるようになったんです。

 

子どもたちとディズニーランドへ

── そこから好きなイラストに本気で挑戦しようと思ったのですね。

 

海保さん:やりたいことを模索していたとき、子育てをしながらイラストを毎日投稿している方をご紹介いただいたんです。その方の絵や工夫した投稿を読ませていただいたとき、「どうやって時間を捻出してるんだろう」と尊敬するとともに、「子育てや仕事を理由に、好きなイラストに本気で挑戦していない自分は、なんて怠慢なんだ」と感じて、イラストへの挑戦を決意しました。

 

自分を律するために「30日チャレンジ」と題してイラストの連続投稿を始めましたが、子どもたちからは「毎日やるとか言わなきゃいいのに。またお母さん自分の首をしめてるよ」って苦笑いされちゃいました。

「日常がネタだらけ」挑戦は想像以上に楽しい

── イラストの連続投稿は、大変でしたか?

 

海保さん:それが、思いのほかすごく楽しくて。日常の失敗をイラストにして誰かに笑ってもらうことで、失敗が浄化された気持ちになるんです。今は「あれもこれも描きたい!」という状態です。

 

── 娘と息子の部屋を分けるために二段ベッドの解体に奮闘する話や、口唇ヘルペスだと思ったらすりごまだったなど、共感できて、クスッと笑えるエピソードが多いですよね。ネタはどうやって集めていますか?

 

海保さん:日常がネタだらけなので、思いついたらスマホにメモするようにしています。最近描き始めた四コマ漫画は、ふと「やってみよう!」と思いついて挑戦したのですが、想像以上に楽しくて描き続けています。

 

海保さんがインスタグラムに投稿した漫画「あせる」のオチ

イラスト投稿で気づいた自分の気持ち

── 海保さんの今後の目標や夢について教えてください。

 

海保さん:毎日イラストや漫画を描いていたら、「私は表現者でいたいんだ」と気づきました。中学時代からの夢だったラジオパーソナリティも、実際に就いたアナウンサーも声を届ける表現者です。これからは表現の場を、声だけでなくイラストにも広げて活動したいと思っています。

 

具体的な夢や目標は、昔からやりたいことリストに書くようにしているのですが、「絵本の出版」はずっと前からリストに書いています。実は、絵本に登場するキャラクターもすでに考えているんです。イラストはもちろんストーリーも自分で考えて、絵のレベルは下手ですがいつか必ず出版したいです!

 

講演会登壇前のカット。人前で話す仕事も徐々に再開

── 現在、日本語と英語での絵本の読み聞かせをライフワークにされていますよね。絵本専門士の資格も取得されたと伺いました。

 

海保さん:そうなんです。わが家には絵本が500冊以上あり、ついに家の本棚だけでは収納できなくなったので、収納サービスを利用して管理しています。収納サービスは便利ですが、読みたい絵本を取り出すのも再び収納するのも手間だし、せっかくの絵本をしまい込んでおくのはもったいないので、たくさんの人に絵本に触れてもらえる絵本カフェもいつか開きたいです。

 

イラストも絵本も、声を使ったお仕事も、これからやってみたいことはたくさんあります。人の目を気にせず、自分が楽しいと思えることに挑戦するとワクワクしますし、心が躍ります。幾つになってもこの気持ちを失いたくないです。

 

PROFILE 海保知里さん

1999年TBSにアナウンサーとして入社。「サンデー・ジャポン」や「はなまるマーケット」などで活躍。2008年にTBSを寿退社し、アメリカで出産・育児を経験。現在は、日本で2児を育てながら、絵本の読み聞かせをライフワークに幅広く活動している。2023年10月よりYouTubeにて全編英語による日本観光ガイドチャンネル「Travel Japan」のナビゲーターも務めている。

 

取材・文/笠井ゆかり 画像提供/海保知里