大人が抱えやすいモヤモヤについて、臨床心理士の八木経弥さんにお話を伺いました。今回は、自分の娘と息子ばかり褒めて、嫁や婿の悪口ばかり言う義母にうんざりしている女性の相談にお答えします。

【Q】嫁や婿の悪口ばかり言ってくる義母にひと言言いたい! 

主人には兄と妹がいます。義母がよほど自分の娘がかわいいのか、ことあるごとに自分の娘のことを自慢してきます。「子育ても仕事も頑張っていて偉い」「孫が優秀なのは娘が頑張っているから」。一方、娘のご主人のことはボロクソで、「娘に任せてばかり」といつも悪口を言っています。また、兄の嫁に対する評価も厳しく、「息子は鬼嫁(義姉)の言いなり」「コントロールされている」など、“義姉=悪者”という意識が強いらしく、いつも文句を言っています。

 

聞かされる私は、「やっぱり身内はかわいくて、よそ者はかわいくないんだろうな」と思ってしまいます。義母はきっと私(嫁)のことも周囲にはボロボロに言っているんだろうなと不信感も募るばかり。正直、娘の自慢も義兄や義姉への不満も聞きたくないし、私の存在が義母のイライラのはけ口になっているだけのような気もします。何かひと言、ぶちかましてやりたい…そんな欲望がムクムク。そろそろ堪忍袋の緒が切れそうです。どうしたらよいでしょうか?

 

「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(1/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(1/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(2/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(2/8P)

義母の悪口にならない表現で夫に相談を

話を聞かされている相談者さん自身も「嫁」という立場ですから、モヤモヤしてしまいますね。ここはまず、ご主人に気持ちを伝えてみてはいかがでしょうか。義理のお母さんを悪く言うのは気まずいでしょうから、さわやかな自己表現である「私」を主語にしたI(アイ)メッセージを使って、気持ちを伝えてみてください。

 

例えば「お母さんのこういう話聞いてると、わたしまでボロクソに言われてるみたいで、つらくなるんだよね。話を変える何かいい方法ないかな?」などです。同居でなければ、義理のお母さんに会う頻度を少なくするといった提案をご主人にしてみるのもアリですね。

ぬいぐるみに向かって不満をぶちかます⁉︎

「何かひと言、ぶちかましてやりたい」ということですが、ちょっと待ってください。こういうシチュエーションにおいては、「言ってよかった!」「スッキリ解決した」というケースはあまりないような気がします。相手は義理の親ですし、言ってしまった後の関係修復こそ大変そうです。「言いたいけど言えない…でもやっぱり言いたい」という気持ちになることはあると思いますが、まずはいったん冷静になりましょう。

 

ただ、ムクムク湧いてくる不満や「ぶちかましてやりたい」という気持ちにふたをして、溜め込んでしまうと心もしんどくなってしまいます。頭の中で“ぶちかます自分”を想像する脳内シュミレーションをするか、何かのモノに吐き出すのもおすすめです。

 

吐き出し口としておすすめなのは、(1)ぬいぐるみ(2)スマホ(3)手紙です。独り言でぶつぶつ言うだけでは吐き出しきれないこともあるので、「吐き出す時間」をつくってぶつけます。ただし相手は人間ではありません。ぬいぐるみに向かって言いたいことを言って、ガス抜きするだけでもいくらか心は軽くなるものです。スマホで自分を録画し、言いたいことを言うのもいいですね。相手に出さない手紙を書いて、不満を書き連ねるだけでも違ってきます。

 

次に「ぶちかます」以外の方法を考えてみましょう。まずは感情的に受け止めないことです。なるべく聞き流し、「お母さんは◯◯という気持ちなんですね」とオウム返ししてもいいです。ユーモアで返すのもおすすめ。あとはあえて義母を褒めるというのもいいです。こうした言い換えを心理学用語でリフレーミングといいます。物事の捉え方を変えます。この場合、ポジティブな方向にリフレーミングするといいと思います。

 

「娘さんのこと、今でも大事に思っていらっしゃるんですね」
「お母さんがこんなに想ってくれていて、きっとうれしいですよね」
「お兄さんって、お嫁さんのことを立てるのがうまいんですね」
「子育ても仕事もお義兄さんから任せられるって、○○さん(妹)は技量があるんですね」

 

こうして、「すごいですよね」と認めてあげると、自分や自分の子どもたちが誉められたことになるので、お母さんも悪い気はしないはずです。いつも同じことを聞かされるようであれば、あらかじめ回答を用意しておくのもよいかもしれません。

 

「ごめんなさい、今日は時間がなくて」「あ、ごめんなさい。洗濯の途中だった」「ちょっと今日は頭痛くて…」などと会話を強制終了するのもアリです。自分に合った方法で、できるだけぶちかまさずに、賢く返してみてくださいね。

 

「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(3/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(3/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(4/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(4/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(5/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(5/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(6/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(6/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(7/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(7/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(8/8P)
「実子ばかり褒める義母にうんざり…ひと言ぶちかましたい」(8/8P)

 

PROFILE 八木経弥さん

やぎ・えみ。臨床心理士/公認心理師。心療内科や児童相談所、スクールカウンセラーなどの勤務経験のもと、開業カウンセラーとしても活動中。仕事では心理学を活用した育児の方法などを伝えている。2人の娘の母。

取材・文/大楽眞衣子 イラスト/まゆか!