横浜キヤノンイーグルス所属選手アマナキ・レレイ・マフィ(通称・ナキ)選手を夫に持つマフィ・あずささん。試合中のマフィ選手の意外な素顔をnoteやインスタグラムに投稿し話題となっています。屈強なマフィ選手と大恋愛し、授かった3児の子育てと、マフィ選手の故郷・トンガとの文化の違いについてお話を聞きました。

 

「週末は心が死んでる」3人の子育てに奔走する日々

── 現在は、まだ小さい3人のお子さんに手がかかる時期ですよね。どのようなスケジュールで1日を過ごしていますか?

 

あずささん:基本的に平日は上の子は小学校、下の2人は幼稚園に通っています。子どもたちが日中にいない平日は平和なのですが、土日は私の心が死んでいますね(笑)。

 

子どもたちがずーっと喧嘩してるんです。私はたいてい仲裁に入らず、その声を聴きながら淡々と家事をするのですが、子どもたちはそれぞれ、”誰々が〇〇って言った!“などと言いつけにくる。それが土日と続くとさすがに”もういいわ! “ってなります(笑)。“そんなこと言うなら離れて暮らしなさい!”って言っちゃったり。でも仲良くしていたらしていたで、3人で走り回ってうるさいんですけどね。

 

──「心が死ぬ」という表現…とてもリアルです(笑)。

 

あずささん:(笑)。しかも今まで「夫はアスリートだから、睡眠時間を削らせてはダメ。自分が頑張ればすむんだから」って思いこんでいて。赤ちゃんのころは、1人目も2人目のときも、基本的には夜中の授乳もおむつ替えも、私が全部ひとりでやっていました。それが、3人目の出産後、ついに革命が起きたんです。

 

── どのような変化があったのですか?

 

あずささん:ナキが夜泣きの対応をしてくれるようになったんです!きっかけは、大学の後輩がわが家に泊まりにきたことでした。そのときに、急にスイッチが入ったみたいで、急に協力的になって。もしかしたら、後輩に良いパパの姿を見せたかったのかもしれません(笑)。

 

3人の子どもたちをまとめて抱えるナキさん。さすがラグビー選手!

── ナキさんが手伝ってくれるようになって、どのような気持ちでしたか。

 

あずささん:ここにきて初めて子育てを分かち合えたなっていう気持ちになりました。

 

私も、アスリートの奥さんから育児の悩みを相談されることがあるんです。夫には睡眠をとってもらいたいけれど、自分の身体はつらい。そういうときには、寝る前の授乳か、朝6時の授乳を代わってもらいなさいってアドバイスしています。それなら”大丈夫、3時間は眠れるから“って言っています(笑)。

 

── 自分ひとりで頑張ろうとしてしまうママも多いですよね。

 

あずささん:そうですね。とにかくアスリートの奥さんは、旦那さんの睡眠を優先するけれど、私たちの心の健康も大事だと思うんです。でも育児中の「やってくれなかった!」っていう記憶は、一生忘れられないんですよ。おばあちゃんになったときも覚えている気がしていて(笑)。だから手伝ってくれるようになって良かったです。

 

── ひとりで頑張らず、視野を広くもつためにも、お子さんに習い事をさせる方は多いと思いますが、何かやっていますか?

 

あずささん:一番上の子は小学1年生なのですが、ラグビーやバスケットボールを習わせています。そんなに体を動かすことが好きっていう性格でもないんですけど、ナキの血が流れているから、ちょっとやんちゃな要素はあると思うので(笑)。これから、いろいろやらせてみたいと思っています。

トンガと日本は文化が違いすぎるけど

── トンガでは、男性の育児参加はポピュラーなのでしょうか?

 

あずささん:旦那の母から話を聞くと、昔のトンガでは男性が育児に参加することはあまりなかったそうです。けっこう亭主関白なので、女の人は家にいて育児や家事をして、男の人が畑仕事に行くという感じです。彼は本当に「一生懸命ラグビーをやってきたから帰ってきたら一歩も動きません」というタイプ。そういう価値観の違いはあるのですが、ナキには“今は旦那さんも家事をする時代なんだよ”と伝えています。

 

── noteを拝見すると、ナキさんのご実家が貧乏だったというお話も…。

 

あずささん:そうなんですよ。めちゃくちゃ貧乏だったんです。彼にはきょうだいが16人いて。1人目のお母さんが6人産んだそうなんです。そのお母さんは、出産が原因で亡くなってしまって。ナキは2番目のお母さんの子です。

 

── きょうだいが多いと、仕送りなど大変そうな印象があります。

 

あずささん:いまだに結婚式や葬式などの冠婚葬祭費や、緊急でお金が必要なときには、ナキが全部払っています。あとは交代制で、ナキのお兄さんやお姉さんもペアになって交代制でナキの実家に仕送りをしたりしています。

 

── 仕送りをするのが当たり前の文化なのですね。

 

あずささん:そうなんです。トンガ人の旦那をもつ妻が集まるとよく、“どれくらい仕送りしている? ”とお金の話題になります。

 

── 仕送りが高額だと、実家に支援するのを躊躇してしまいそうですが…。

 

あずささん:それはないんです。トンガに行って、どんなお母さんのもとでどんなふうに育ったのかを目の当たりにすると、言葉を失います。むしろ私たちは生きていけるから喜んで支援するし、子どもたちが大きくなったら私が働くつもりでいます。

家族と円満に過ごせているように見える本当の理由

── ご家族との和気あいあいとした雰囲気が伝わってきますが、家族と円満に過ごすために意識していることはありますか?

 

あずささん:そうですか?私自身は円満に過ごせてる気がしないのですが(笑)。円満に見えるのだとしたら、全部笑い話にするようにしているからかな。つらいことがあっても、その話題で笑ってもらえると自分のなかで浄化できる、というか。noteも読んでくださった方から“面白かった”“辛そうなのになぜか笑っちゃった”と言ってもらえると、育児のつらさとか、全部吹っ飛んじゃうんです。

 

── ポジティブにいられるよう心がけているのですね。

 

あずささん:それはあるかも。例えば子どもたちが全員ノロウイルスにかかってダウンしていたとします。正直、こんなつらいことってないじゃないですか。でも、汚物を片づけたことだって、“大変だったよね”って誰かと笑いあえれば、徐々にモヤモヤした気持ちが浄化されていく気がします。

 

PROFILE マフィ・あずささん

京都生まれ京都育ち。横浜キヤノンイーグルス所属のアマナキ・レレイ・マフィ選手と結婚後、3児の子育てに奮闘中。ラグビー選手の夫との日々の出来事をnoteやインスタグラム(@amanakileleimafi)で発信している。

 

取材・文/池守りぜね 写真提供/マフィ・あずさ