2度のがん発覚から46歳で出産した、だいたひかるさん。手にはリンパ浮腫。大腿骨頭壊死も抱えながら、どのように子育てに向き合っているのでしょうか。(全4回中の3回)

コロナ禍の出産で実家に帰れず

── 2022年1月にお子さんを出産されました。お子さん誕生後の生活はいかがでしたか?

 

だいたさん:毎日とても楽しいです。子どもが生まれたばかりの頃は、夫婦二人だけで慣れない育児に奮闘して、正直かなり疲れました。出産直後、病院で渡されたアンケートに「育児がつらいと思うことがあるか」という質問があったんです。最初は、子どもはこんなにかわいいのに思うわけがないと思っていましたが、実際にやってみると育児の大変さを実感しました。

 

眠いし、胸も痛いのに、子どもにミルクあげて、オムツ変えて、寝かしつけて、泣いたら抱っこして。出産後、産院には5日間滞在しましたが、搾乳室なんて、地獄絵図みたいでしたよ。これで旦那さんにちょっとでも心無いことを言われたら、ブチ切れるんだろうなと思います(笑)。

 

── 産院を退院して、自宅に戻ってから誰か手伝ってくれる人はいましたか?

 

だいたさん:コロナ禍だったため実家の母には頼れず、夫婦2人で乗りきりました。幸いなことに、私が産後、体が回復していないこともあったので、夫が1か月育休を取り、積極的に夫が息子の面倒を見てくれているので助かりました。

 

よく実家の母が「人生で子育てが一番楽しかった」と言っていましたが、実際に自分が体験してみると、本当にその通りだなと思います。こんなに楽しいんだったら、もっといっぱい産んでおきたかったなと思って(笑)。

リンパ浮腫、大腿骨頭壊死を抱えながらの子育て

だいたひかるさん夫婦とお子さん
ハーフバースデーにて。家族3人仲睦まじい風景が微笑ましい

── がんの治療などで、子育てに影響が出ることはありますか?

 

だいたさん:がんの手術でリンパを取ってることもあり、立ったまま子どもを抱っこできないんです。座って膝の上に座らせてハグをするくらいなら大丈夫ですが。でも、日中、子どもと2人で家にいたら、そうもいっていられないんですけどね。

 

── 抱っこするとどうなるのでしょうか?

 

だいたさん:リンパ管の流れが悪くなることで手足がむくむリンパ浮腫になってしまうんです。実際、2022年と2023年の6月、今まで合計2回、リンパ浮腫で右腕がパンパンに腫れてしまったため、手術を受けました。リンパ浮腫の治療のために、腕がむくんでいる部分に包帯を巻いて腕を圧迫しますが、それをやると、今度は家事がやりにくいんですよ。しかも包帯をぐるぐる巻きにしているから腕が重い!今は、包帯を巻くのを諦めて、腕にスリーブというサポーターをしています。

 

左手だけで抱っこしたり、子どもが泣いたら足や腕の間に挟んでみたりと、工夫しながらやっています。外での移動はベビーカーに乗せたり、夫がいる時は、全部夫に頼んで子どもを抱っこしてもらっています。

 

── 病気といえば、だいたさんは難病指定をされている大腿骨頭壊死の診断も受けていらっしゃいますよね。足のつけ根部分の関節に痛みなどが生じる病気ですが、発症したのはいつくらいですか?

 

だいたさん:2020年頃だったと思いますが、病院に行ったところ、難病指定されている大腿骨頭壊死だと診断されました。最初、なんとなく足のつけ根が痛いなと思っていて、信号で止まって歩こうとすると、足がガクッとなるような感じがあったんです。乳がんは、骨に転移しやすいと聞いたので、「もしかしてがんが転移したのかな?」と思って検査を受けたら、骨頭壊死だといわれました。あまりにも痛みがひどくなったら手術をするかもしれませんが、今は経過観察です。

 

── 足に痛みがあるなかで、赤ちゃん抱っこしたりするのは結構大変ですね。

 

だいたさん:子どもに「高い高い」をやってあげられなかったり、ほかのお母さんより抱っこする頻度も少ないと思います。ただ、座って子どもと一緒に遊んであげることはできるので、工夫しながらやっています。

リハビリで水泳や鉄棒ができるまでに回復

だいたひかるさん家族
1歳記念にて。スクスクと成長する姿に笑顔が溢れる

── 乳がんやリンパ浮腫が原因で、人によっては肩が上がりにくい方もいるそうですが、だいたさんはいかがでしたか?

 

だいたさん:私は2回、がんで右胸を手術していますが、術後は腕が上がらない、自分の髪も洗えない状態でした。そんなときは夫に手伝ってもらっていました。また、腕が痛すぎてくしゃみをするたびに腕がちぎれるんじゃないかと思ったり、料理ができない時もありました。このまま一生腕が上がらないままだったらどうしようと不安に思ったことも、何度もあります。

 

── リハビリの結果、生活に変化はありましたか?

 

だいたさん:手術した翌日から、リハビリの先生が来るんですよ。退院してしばらくはリハビリに通っていました。それもあってか、1年たった今では鉄棒にぶら下がれるまでに回復しましたよ。

 

私は右乳房を全摘出したことで、水着が着られないから大好きなプールももう入れないと思っていたんです。でも、手術してから1年たって腕が上がるようになったころ、プールに行って水着を着てみたんですね。胸には体を洗うスポンジなど丸いものを詰めたんですが、いい感じにうまくフィットしました。抗がん剤で髪が抜けてもスイムキャップつけたら目立たないから平気。抗がん剤治療が終わった半年後くらいには、私は前みたいにプールで楽しく泳げるようになっていましたね。

 

がんになると先が見えないから、いろんなことに不安を感じたり怖いと思うことがあります。私も、このまま一生腕が上がらないのかなとか、髪が生えてこなかったらと考えたこともあります。でも、2回乳がんを経験した今言えることは、意外とできることってたくさんあるなと思ってます。

 

PROFILE だいたひかるさん

お笑いタレント。2002年『R-1ぐらんぷり』の初代王者。2016年、2019年と2回のがんを乗り超え不妊治療の末、2022年に第1子出産。

 

取材・文/間野由利子