無理に優しくなりすぎない社会に
── OriHimeはさまざま理由で外出が難しい方をサポートしていますが、結城さんが目指す社会の形とはどのようなものですか。
結城さん:自然な形であってほしいと思います。OriHimeを使っていると多様性とかインクルージョンという言葉が出てくるのですが、我々としてはユニバーサルで誰もが使えるシステムや物を開発したいと思っています。使う方が障がいをお持ちとか、病気の治療中といった背景とは関係なく使える。あえて区別するのではなく誰もが自然な形で使えるものができたらなと思っています。
先に話をした、脊髄損傷で寝たきりの番田という社員が秘書として働いていたときに、社内では彼ができることと、できないことを特別扱いするのではなく、それぞれの得意・不得意分野と同じように接していました。極論で言うと無理に優しくなりすぎない社会と言いますか、お互いに敬意を持ってフラットでいられる社会が理想です。
ただ、現時点では体が動かなかったり、寝たきりだったりするとハードルが高い分野もあるので、そこをテクノロジーで解決していく時代にしていきたいと思っています。障がいや病気の有無といった定義がなくなればと思っています。
── これから開発したいことはなんですか。
結城さん:外出困難者には本来、高齢者の方も含まれているのですが、ITの分野との親和性が低いと思ってなかなかアプローチができていなかったんです。ですが、スマホやタブレットをお使いの方も多いですし、テクノロジーへの抵抗感もだんだん減っていると思うので、OriHimeを使ってもう一度、社会で活躍する機会を作れたらと思っています。
PROFILE 結城明姫さん
高校生科学技術チャレンジ(JSEC)で文部科学大臣賞、YKK特別賞。アメリカ開催のインテル国際学生科学技術フェア(ISEF)出場前に結核に倒れ長期入院。翌年同大会に再出場しグランドアワード優秀賞受賞。早稲田ものづくり大賞、学生起業家選手権、キャンパスベンチャーグランプリ等において留学先のロンドンからデモを行い、優勝。2012年オリィ研究所を設立。「Forbes Japan 30 Under 30 サイエンス部門」、「Forbes CHANGE MAKERS OF THE YEAR2021」選出。
取材・文/内橋明日香 写真提供/結城明姫、オリィ研究所