「クレジットカードを持たせてもらえない」などの恐妻家エピソードを持つDJ KOOさん。「妻の意見は全面的に尊重」には家族なりの理由がありました。(全4回中の3回)

不妊治療と病気を経て授かった命

── 愛妻家として知られ、SNSでは仲睦まじい姿を発信されているKOOさん。「イクメン」という言葉が生まれるはるか前から、夫婦で子育てに向き合っていらっしゃいます。

 

DJ KOOさん:子どもができたときから、育児に関わる気持ちは、ずっと大切にしてきたつもりです。それこそ妻がお腹に子どもを宿したときから、夫婦でリアルタイムに情報を共有してきました。もちろん夫婦ですから、ケンカをしたり、意見が食い違うこともありますが、子どものことに関しては、同じベクトルでワンチームとして取り組んできたという思いがありますね。

 

── 男性の場合、子どもが生まれてから徐々にパパとしての自覚が芽生えるケースが多いと聞きます。「子どもがお腹にいるときから」というのは珍しい気がします。

 

DJ KOOさん:結婚後、なかなか子どもができず、夫婦で産婦人科に通って不妊治療をしていました。思うように結果が出ず、それが原因でギクシャクしたこともありました。そんななか、妻が甲状腺ホルモンの病気を患い、このままだと子どもが産めなくなってしまうかもしれないという状況に。

 

その後、幸いにも妊娠できたので、「これはもう神様からの授かりものだから、無事に出産できるように一緒に頑張ろう!」と2人で決意。そこから妻のケアをなにより重視するようになりました。それは子どもへのケアでもあり、父親になる自分の気持ちのケアにもなりましたね。そうしたことを乗り越えてきたので、家族を大切にしようという思いがいっそう強くなりました。

 

やさしい表情!赤ちゃんを抱く妻に寄り添うKOOさん

── 命の大切さを目の当たりにされたことで、夫婦の絆がより深まったのですね。

 

DJ KOOさん:子どもが小さな頃からお風呂に入れたり、食事の世話をしたりと、日常的に育児には関わってきたつもりですが、うちはとにかく妻が一生懸命子どもに向き合い、大変な部分をすべて担ってくれていたので、僕は結局、“美味しいとこ取り”だったと思いますね。

ずっと大事にしている夫婦の対話

── 子育てにおいて夫婦で大切にしていたことはありますか?

 

DJ KOOさん:ずっと大事にしてきたのは、対話ですね。その日にあった子育ての出来事はすべて共有する。不平不満があれば、その都度、話して解消することを心がけてきました。

 

僕も、どんなに忙しくても必ず最後まで話を聞くから、妻も僕に気をつかって話さずにいるのだけはやめてほしいと伝えていました。

 

仕事から帰ってくると、まず最初に子どもの様子を見て、それから奥さんが話したいことを最後まで聞くというのが、僕のルーティン。子どもができてから、夫婦のコミュニケーションがすごく増えたのは良かったと思います。

 

ワイルドな表情でスーツを着こなす90年代当時のKOOさん

── 仕事から疲れて帰ってきた後に、パートナーの話を毎回“聞ききる”のは、なかなか大変だと思います。非常にお忙しいなか、「今日は疲れているから、後にして…」ということはなかったのですか?

 

DJ KOOさん:ないですね。そもそも2人の子どもですし、ずっと育児と向き合っている妻のほうが、僕よりよほど大変なはずですから。

全面的に妻の意見を尊重する理由

── 対話を大切にしてきたKOOさん。娘さんが成長されてもそれは変わりませんか。

 

DJ KOOさん:子どもが中学生くらいになると、娘に「今日はどうだった?」と聞いても、「それはもうママに話したから、ママから聞いて」と言われてしまうことが増えていきましたね。

 

── ちょっと寂しくなっちゃいますね。

 

DJ KOOさん:そうなんですよ。でも妻は、そういうときも必ず娘がいる前で、「パパ、今日はこういうことがあってね…」と、2人の会話を再現してくれるんです。だから、一度も疎外感を抱いたことはないし、家族でつねに情報が共有されてきました。

 

妻と娘手作りの和菓子 KOOさんのインスタにたびたび登場する家族の手料理は、どれも美味しそう!

── 娘とママが仲良しだと、パパが孤立してしまうケースもあるかもしれません。そうならないように、配慮していらしたのでしょうね。

 

DJ KOOさん:その気づかいがすごくありがたかったですし、すごい女性だなあといつも思っていました。わが家では、子育てに関しては、全面的に妻の意見を尊重しています。

 

なぜなら、一番近くにいて、常に子どもと向き合っている妻の出した答えが、誰が何と言おうと「わが家にとっての正解」だから。

 

しかも、子育て中のママというのは、ご近所やママ友づきあいを通じて、いろんなリアル情報をたくさん持っているでしょう。そんな妻が愛情をもって一番いいと思うことをやっているのだから、「ちょっとどうかな?」と感じることがあっても、余計な口出しはしないというスタイルを貫いてきました。

 

妻の出した答えが、誰が何と言おうと「わが家にとっての正解」

反抗期の娘と妻がぶつかるときは

── サポートは惜しまないけれど、余計な口出しはしない。それだけ信用していらっしゃるのですね。とはいえ、反抗期のときなど、子育ての方針がぶつかる場面はなかったですか?

 

DJ KOOさん:反抗期のときは、妻と娘でしょっちゅう怒鳴りあいの喧嘩をしていましたが、そんなときは、違う部屋にいってしばらく収まるのを待っていました。

 

── えっ、止めないんですか…?

 

DJ KOOさん:止めないです。その後、しばらくすると、2人でTVを見てケラケラと笑いあっているんですよね。そこに僕がそっと入って会話に加わる、みたいな。毎回、決まってそのパターン。だから、ある意味、ケンカは2人にとってコミュニケーションの一環なんだなと。できるだけ2人のスタイルを崩さないようにしようと思っていました。

 

──「あえて」止めずに見守っていらしたのですね。失礼しました、ただ怯えていらっしゃるのかと…。

 

DJ KOOさん:実はそれもあります(笑)。だって、怖いですよ…。大声を出されるのもビックリするし、2人ともすごい形相で取っ組み合いでも始めそうなくらいの勢いなんですから。でも、きっと2人からすれば、自分たちの世界にズカズカ踏みこまれたくないだろうし、娘にしても、僕に見せたくない部分もあるでしょうしね。

 

だからきっと、僕の知らないところでは、親子の厳しいぶつかり合いもあったりするのかなと思ったりしますね。

 

PROFILE DJ KOOさん

1961年生まれ、東京都出身。ダンス&ボーカルグループTRFのDJ、リーダー。ソロとしては、“触れ合う人々をエネルギッシュに!元気に!笑顔に!”をモットーに幅広い音楽をDJスタイルでプレイし、共感、賛同を得ている。バラエティー番組にも多数出演。幅広い層のファンを獲得している。

 

取材・文/西尾英子 写真提供/DJ KOO