アイドルグループ「でんぱ組.inc」のメンバーとして活躍した最上もがさん。2021年に第一子となる娘の“こもちゃん”(愛称)を出産し、子育てブログではシングルマザーとしての決意をつづるなど、子育て世代から多くの共感を集めています。

 

娘さんの成長を感じる瞬間や、その成長に込める願いについて、自身の半生を綴った初のフォトエッセイ『も学 34年もがいて辿り着いた最上の人生』を上梓した最上さんに伺いました。(全5回中の4回)

 

最上もがさん

「娘の世界が広がっていること」が成長の証

── 娘の“こもちゃん”はもうすぐ2歳になりますね。どんなときに成長を感じますか?

 

最上さん:言葉を少しずつ話せるようになったのですが、今日は「たーち!(タッチ)」って新しい言葉を話していました。あと、今日ほぼ初めて2語文を喋ったんですよ!「ママ、こっち」って。すごく嬉しくて、可愛かったです。

 

今までだと本人は言いたくても言葉が分からないから「あれ」とか「これ」とか指さして、何か察しろ…という感じで。私はいつも一緒にいるから何となく分かるんですけれど、私以外の人だと伝わらないことにイライラしちゃうんです。

 

最近はちょっとずつ言葉や表現を覚えていって、「こうすれば大人に伝わるだろう」というのが分かってきているのを見ていると、すごく成長したなあと思います。

 

最上もがさん
最上さんの髪を結わえるこもちゃん。親子揃って可愛らしいツインテール姿に!(写真提供/本人)

── 娘さんなりにコミュニケーションを取ろうとしているのですね…!

 

最上さん:前まではママ一色だったのですが、最近はじいじ(最上さんのお父さん)がめっちゃ好きですね。赤ちゃんって生まれたときはママしか認識していなくて、半年くらい経ってからママかそれ以外という感覚になるらしいんですよ。

 

ママ以外の存在を認めて好きになったというのが成長だなと感じています。娘のなかではママとじいじとお友達、というふうに世界が増えているのかな。

 

最近は娘が家で飼っている猫の名前を呼ぶのですが、それがすっごく可愛いんです!2匹いるうちの「シオちゃん」は、娘がちょうどお腹にいる頃に生後2か月くらいの子猫でした。お腹の上で寝ていたからか分からないんですけれど、すごく仲がよくて、娘がギャン泣きしてもシオちゃんは逃げずに近くにいるんです。

 

愛猫のシオちゃんと娘のこもちゃん。窓の外を見つめる佇まいがまるで姉妹のよう!(写真提供/本人)

今日もご飯を食べているときに「シーオちゃん」って叫んでいましたね。シオちゃんも娘もにぼしが好きなのですが、娘が食べるときにあげたりしていて、姉妹みたいな感じです。

 

── 最上さんのブログでは最近「イヤイヤ期」が大変だと書かれていましたが…?

 

最上さん:1歳半頃から自分のやりたいことがはっきりしてきて、今は朝起きた瞬間から「やだー」って言ってる日もあります(笑)。寝起きが悪い日はカーテンを開けても「やだ」、ベッドから降りるか聞いても「やだ」っていう感じで…。何かを言おうとしても、娘の泣き声でかき消されちゃうんです。

 

ただ泣いている途中にちょっと溜める瞬間があるんですよ。そのすきを狙って「抱っこする?」って聞くと「うん…」って甘えてきて(笑)。

 

一つひとつの動作に時間はかかるんですけれど、今は本人も自分の気持ちを上手く発散できず、不快なことも的確に伝えられないからモヤモヤしているのだと思うんです。今朝はうんちがあまり出ていなくて、お腹が苦しかったみたいでした。不機嫌な原因が少しずつ分かってくると、すごくうれしくなりますね。

こもちゃんとの生活で「食の大切さ」に気づいた

── 最上さんが育児で心がけていることはありますか?

 

最上さん:まずは怒らないことですね。私が困ることがあったとしても、娘自身が悪いことをしているわけじゃないので、冷静に考えると「怒る理由がない」んですよね。って分かっていても、イライラしちゃうこともありますが…。

 

あとは砂糖を控えるようにしています。砂糖って与えすぎるとイライラする原因になると思っているので、うちのおやつでは大豆とか手作りの米粉クッキーとか素朴な味のものが多いですね。

 

ただ食事をレトルトで済ませようとすると砂糖が入っていることが多いんですよね。一食くらいはいいかなと緩くしていますが、なるべく自分で作ってあげるようにしています。

 

こもちゃんの話題になると、自然に表情が柔らかくなる最上さん

── 娘さんのためにご飯を作ることで、自分が摂る食事の栄養バランスなども改めて考えられそうですね。

 

最上さん:食事ってすごく大切だなと子育てをして初めて気づきました。ひとりのときは食事にまったく気をつかっていなくて、食べたいときに食べたいものを好きなだけ食べるという生活だったので、何を食べると良いのかなんて考えたことがなかったですね。

 

手作りのほうが栄養面は良いと思っていても、自分だけだとどうでもよくなってしまって。ただ子どもの場合は、小さな身体に食事を取り込むわけなので、あまり身体に良くないものは食べさせたくないんです。

 

自分が仕事で忙しいときはレトルトを活用することもありますが、ご飯を作れる状況ならなるべく工夫してあげたいなと思っています。

自分とは違う「自己肯定感の高い子に育ってほしい」

── 大切に育てられている娘さんは、どういう大人に育ってほしいと願っていますか?

 

最上さん:わかりやすく言うと、私みたいにはなってほしくないなって。私は自己肯定感がすごく低いので、娘には自己肯定感の高い子に育ってほしいんです。毎日ちゃんと「好きだよ」と伝えて、ハグして、自分のことを好きになってほしいなと思います。

 

自身のイベント中、お留守番していたこもちゃんを抱きしめる最上さん(写真提供/本人)

別に職業は何でもいいですし、娘がやりたいことが自分のフォローできるものだったら、何でもしてあげたいなと思います。仮に働きたくないならそれでもいいし、娘が幸せに楽しく生きられるために、自分が頑張っていこうと思っていますね。

 

── 最上さん自身は娘さんにとって、どんな母親でありたいと思っていますか?

 

最上さん:娘にとって好きな母親でいたいというだけですね。私は世の中のシングルマザーのお手本なわけではないし、そもそもSNSで「理想のママ」という人がいてもその内面まではよく分からないですよね。

 

最上もがさん
時には悩んだり、つまづいたりしながらも母娘の生活を楽しんでいる最上さん

表に出ていることって綺麗な部分だけの場合が多いから、個人的にはあまり見本にはしていなくて。ただ「この人の考え方がすごくいいな」と参考にしたり、子どもの心理が分からないときは本から学んだりすることはありますね。

 

とにかく娘が何歳になっても「ママのこと好き」って言ってもらえるような母親になりたいなと思っています。

 

PROFILE 最上もがさん

1989年生まれ。東京都出身。2011年アイドルグループ「でんぱ組.inc」に加入し芸能界デビュー。2017年8月にグループ脱退。脱退後は、個人事務所を設立しマルチに活動中。2021年に第一子出産。

 

取材・文/荘司結有 撮影/植田真紗美