何げなくむいたみかんの皮が、何かの形に見えたという経験は「みかんシーズンあるある」。そんなふとしたきっかけから1個のみかんの皮をカッターでくり抜き、絵を浮かびあがらせるという「みかんの皮アート」を極めることになった、札幌クリスチャングループの牧師・岡田好弘さんにお話を伺いました。

きっかけは「むいた皮が偶然サソリに見えた」

── みかんの皮アートを始められたきっかけは何だったのですか。

 

岡田さん:美術学科出身で、もともと工作は好きでしたが、みかんの皮アートに出会ったのは2006年のことです。

 

ある日、むいた皮が偶然サソリのように見えたのがきっかけです。そこに可能性を感じて、1日30分程度、2週間かけてサソリを完成させました。

 

それから、いろいろな動物を作るようになりました。使う道具はカッターのみです。頭の中で完成図をイメージしながら、みかんの皮にカッターで切り込みを入れ、1個のみかんからひとつの作品を作ります。

 

── 2011年には、『あたらしいみかんのむきかた』という本も出版されました。

 

岡田さん:いくつかの出版社に、自分で企画を持ち込んだんです。それまで作品はどこにも公開していませんでしたが、40作品ほどそろったので企画を持ち込みました。

 

出版後は、かなり反響がありました。まず、配本した書店員さんのTwitterから広がっていって。それからは取材やイベントなどにも声がかかり、本は10万部以上売れて、テレビでも100回くらい紹介されました。

 

思えばこの頃がいちばん作品を作っていましたね。みかんのシーズンが終わるとホッとしたくらいです(笑)。

 

── これまでどのくらいの数の作品を作ってこられたんですか?

 

岡田さん:これまでに動物をメインに170種類以上は作ってきたと思います。

 

── すごいですね。そんなにも多くの作品を、どうやって発想されるのですか。

 

岡田さん:作品づくりは、みなさんが思われる以上に地味な作業です。むいては少しずつ形を修正して、ということをひたすら繰り返します。

 

それでも、いくつかのパターンができあがってくると、それに当てはめて別のデザインを考えることができるので、かなりラクになりました。

 

たとえば、鹿は馬を手本に、カバはゾウを手本に変形させるといった具合です。家族の誰かが作った失敗作品からインスピレーションを得て、作り上げる場合もあります。

 

── 初心者でも簡単にできる作品を教えてください。

 

岡田さん:形が単純という意味では、ウサギがおすすめです。馬や猿も、比較的作りやすいです。ただ、形が単純な作品は面積の広い部分ができて、そこを平らに伸ばそうとすると皮が破れやすいんですよね。

 

初めての方にとっては、どれもそこまでやさしくはないんですが、いったんコツをつかめば難しくありません。

 

たとえるなら、ギターの習得のようなものですね。いったんコードを覚えれば、ある程度聴かせる演奏ができるようになりますよね。最初のハードルを超えれば、それほど苦労せずにいろいろなデザインを作れるようになると思います。

 

── いちばん難しいデザインはどれですか。

 

岡田さん:エビでしょうか。

 

通常は多少切れ目を入れるラインがずれても問題ありませんが、なかには線の入れ方が5ミリずれたら形の雰囲気が変わってしまうような作品もありますので、そういったデザインは難しいですね。

 

一度作って写真を撮ったきり、二度と作っていないデザインもなかにはあります。気に入った作品は、乾燥させて箱に入れて保存したり、額に入れて飾ったりしています。

 

── 皮アートに適したみかんの選び方があれば教えてください。

 

岡田さん:僕は静岡県でよく生産されている「青島」という品種をよく使います。皮が丈夫で、作品づくりにはちょうどいいんですよ。味もおいしいですし。

 

皮が厚くてむきやすいみかんが、必ずしも破れにくいというわけではありません。10月頃に出回る青いみかんは皮が薄くてむきにくいんですが、皮が丈夫なので竹串を使ってむけば、作品は作りやすいです。

 

── 毎シーズン、どれくらいのみかんを消費されるのですか。

 

岡田さん:ひと冬で30〜40キロでしょうか。5人家族なので、それほど多いわけではないと思いますよ。

 

本を出した頃は練習も必要だったので、倍以上食べていました。家族もみんなみかんが好きなので、助かっています。みかんが食べられない人には、皮アートは無理ですよね(笑)。