男女平等の教育を受け、交際時も「割り勘」が当たり前だった世代のなかには、結婚後も「つねに平等で」と思っている人もいます。とくに「夫の被扶養者にはなる」ことには、抵抗感とモヤモヤを感じることも多いよう。

 

出産後に復職予定もすぐに妊娠がわかって

「結婚後もずっと共働きでいくつもりでした。最初の子どもを妊娠したときも、育児休暇を早めにきりあげてすぐ復職する予定だったんです」

 

そう話すのは、アキエさん(39歳、仮名=以下同)です。9年前に同い年の男性と結婚、思いがけないタイミングですぐに妊娠が判明します。

 

「臨月に入っても仕事をして、上司に諭されてやっと出産休暇に入りました。仕事が好きだったんです」

 

無事に長女を出産すると、あまりのかわいさにすぐの復職を迷ったほどでした。半年ほどで復帰する予定が延びて、“そろそろ”と思ったら、なんとまた妊娠していることに気づきました。

 

「しかも今後は双子で。これは大変だと思いました。こうなったら腹をくくって、しばらく育休をとろうと決めました」

「夫の被扶養者」になることにモヤモヤする妻

しかし、経済面で不安はありました。いろいろな条件を照らし合わせ、アキエさんの場合、夫の被扶養者になることで夫の税金が少し安くなると判明。

 

「そこで夫の扶養に入ることにして、産休と育休で2年半くらい休みました。夫は子どものめんどうをよく見るし、家事も率先してやるタイプ。

 

私に何かプレッシャーをかけてきたことはありません。でも私自身は、夫に“養われている”のが、とても嫌でした。負い目を抱えているようで…」

 

アキエさんと夫は恋人時代から割り勘が当たり前でした。誕生日や何か特別なことがあったときは別ですが、食事をしてもほぼ割り勘。ふたりとも働いていて、収入の差もあまりなく、割り勘が気楽だったそう。

 

子ども3人を保育園に預けて復職したとき、アキエさんは心底、ホッとしたと言います。約3年ぶりの出社時に、会社の前で思わずガッツポーズをとってしまったほど。

 

「やっぱり仕事が好きだなと思うと同時に、夫の扶養から抜けたことが大きかったです。夫に養われているわけではないと思ったら、よし、これからもがんばろうと」

 

その日、彼女は夫にそのことを伝えました。養われているのがとても心苦しかった、と。夫はキョトンとして、「だって出産って特別なことじゃない?」と言ったそう。

 

「夫が言うには、『つきあっているときも、“特別なとき”はお互いでおごっていたじゃない?出産は特別なこと、きみが復職するまで僕はがんばろうって思っていたよ』と。

 

でも、夫がいくらそう言ってくれても、やはり私の引け目はなくならなかったと思います。それだけ平等でなければならない、と思い込んでいるんでしょうね」

「扶養家族になりたくない」反発心を溶かした夫の言葉

育休中、実母が手伝いに来てくれたとき、「子ども3人とあなた、4人をおんぶしている状況なんだから、ダンナさんには感謝しなさいね」と言われて、アキエさんのモヤモヤはさらに大きくなったそうです。

 

「そんなこと言っても、子どもは私ひとりでできたわけではありませんからね。生活のめんどうをみてくれる夫に感謝しろという母の言い方は、不愉快でした。

 

義母からも似たようなことを言われました。ただでさえ負い目を感じているのだから、周りはそういうプレッシャーを与えないでほしいですよね?」

 

いっぽう、夫からは「僕がもし病気になったら、経済的にも精神的にもきみに頼らざるを得なくなる。お互いに遠慮しないで頼り合えるから夫婦なんじゃないの?」と言われました。

 

平等というのは、いつも半々というわけではなく、「支えたり支えられたり、そのときどきで考えていけばいい」という結論に達したアキエさん。

 

あまり肩ひじ張らずに、夫とふたりで多忙すぎるけれど楽しい日々を送っていこうと気持ちを切り替えたそうです。

 

文/亀山早苗 イラスト/前山三都里