家庭の不用品を手軽に販売できるフリマアプリ。すっかりおなじみですが、皆さんは活用されていますか?わが家の義父(後期高齢者)が最近、フリマアプリに興味津々で…?

 

フリマアプリには手を出すな

わが家の義父はもともと整理整頓が大好き。そのわりに捨てたがらないので、収納スペースにはモノがみっちりと詰まっています。

 

義父自身も捨てられないモノの行く末はやはり気になるようです。フリマアプリで不用品を売ったり、欲しいものを買ったりしている私の姿を見て、以前から何度か「それって私にもできるの?」などと聞いてきたことがありました。

 

しかし義父、スマホを持ってはいますが、活用しているというには程遠い状況。アプリの通知音が鳴るたびに「何か音がするけど何の知らせなのか分からない」と私や孫たちに聞いてくるので、同居家族としてはなかなかのストレスです。

 

そのうえ、フリマアプリで不用品の売買なんて始めたら、家族がどれだけフォローしなければならなくなるか…。

 

ついそう考えてしまう私は、「フリマアプリは手軽なぶんトラブルも多いし、けっこうめんどうくさいから、やめておいたほうがいいですよ」と義父に言い聞かせる日々でした。

なぜ?インストールが完了している

しかしある日のこと。仕事を終えて帰宅した私を待ち構えていたのは、スマホにフリマアプリの画面を表示した義父でした。

 

「買ったものを発送しましたって連絡が来たんだけど、何か返事をしたほうがいいの?」と言う義父に、

 

「えっ、何か買ったんですか?自分でアプリに登録できたんですか?」と驚く私。

 

アプリをインストールしたのは、その日仕事が休みだった夫でした。義父に頼まれて古い家電の部品をネットで検索するうち、フリマアプリでその部品を見つけたのだそうです。そうして夫は言われるがままに義父のスマホにアプリをインストールして、ユーザー登録をし、その古い部品の購入手続きした、ということなのでした。

 

今まで断り続けてきた私の努力はいったい…。

 

夫は、普段フリマアプリを使っていないため、取引の流れについてはよくわかっていません。結局、義父のサポートは慣れている私の役目になるのが…ありありと目に見えるよう…。

 

虚脱感に襲われた私でしたが、登録してしまったものは仕方ありません。

 

幸い義父の取引相手は良い評価がたくさんあり、信頼できる方の様子。購入した部品もその日のうちに素早く発送手続きをしてくれていました。

 

「発送連絡への返信はしなくてもいいのか」と気を揉む義父に「別にしなくてもいいと思いますけど、気になるならこの欄からひと言『発送ありがとうございます。到着をお待ちしています』くらいのあっさりした返信をしてもいいと思いますよ、個人情報とかは匿名配送になっているので書いちゃダメですよ」と伝えました。

購入動機や使用予定を丁寧に伝える義父

その後しばらく義父は一生懸命にスマホをいじっていました。「はじめてのおつかい」ならぬ、「はじめてのフリマアプリ」だな…と微笑ましく見守っていた私でしたが、ふと不安になり、義父に「送信する前に、一回私に見せてくださいね」とお願いしておきました。

 

しかし、その約束はあっさり破られます。義父のアプリの取引メッセージ欄には、いつの間にか「この度は大変お世話になります」から始まる義父の丁寧な挨拶が…。そしてそこに続くのは、この家電の部品を長いこと修理したいと思っていたこと、自分の年齢、息子が部品を探してくれたこと、修理後はこうやって使いたいと思っていること、などなど…。

 

スマホの画面をスクロールして読まなければならない分量の文章が綴られていたのでした。しかも、しっかり送信済みとなって…。

 

「ブログじゃないんですから…」と脱力してなげく私に、何がいけなかったのか分からない様子の義父。

 

確かに個人情報は含まれていませんが、このメッセージを送られた販売者の方はどう思われたでしょうか…。

 

後期高齢者が頑張って購入してくれたんだな、と微笑ましく思ってくれていればありがたいのですが…。

成功体験にさらなる意欲が

その後、購入した部品は無事に届き、長年の懸案だった家電の修理ができて義父はご満悦です。

 

「これって要らないものも自分で売れるんでしょう?」と、販売にも意欲を感じている様子。

 

確かに、日中暇を持て余している様子でもありますし、たとえ売れなくっても、出品作業は義父のいい暇つぶしになるかもしれない…あわよくば不用品が減るかも…いや、しかしその過程で絶対にまためんどうなことが起きるぞ…。

 

こうして、義父のはじめてのフリマアプリ体験に振り回される最近の同居嫁なのでした。

 

文/甘木サカヱ イラスト/ホリナルミ