ゲームで勉強が効率よくなって

── 東大でのキャンパスライフはいかがでしたか。

 

三浦さん:悩みを打ち明けると、一緒に真剣に考えてくれてアドバイスをくれる人が多かったです。知らないことに出会うとすぐに調べたり、詳しい子に聞きに行ったり。美術館や博物館も大学の友人とよく行きました。

 

ジャンル問わず、さまざまなことに関心がある方が多くて、麻雀やスロットが好きな人は、確率まで突き詰めていました。飲み会の席でも、いつのまにかみんな自分の専攻がいかにおもしろいか話したり、時事ニュースを話し合ったりすることも多かったです。

 

── 探究心がすごいです。東大生は勉強だけでなく漫画やゲームが好きな人も多いと聞きます。

 

三浦さん:うちも、小さいころは勉強を何分したらゲームを何分していいというルールでした。だんだん、ゲームしたさに勉強も効率よくするようになるんです。そればかりになるのは心配ですが、ゲームを通して生物の種類を知れたり、図鑑や博物館で見たものが出てきたりするので、すごく素敵なものだと思います。このアイテムをいつ使おうとか、次の展開も頭で考えますし。ちなみにうちの子たちは、ポケモンでカタカナを覚えました。

 

三浦奈保子さん

── たしかに、キャラクターはカタカナばかり!お子さんたちもゲームは好きですか。

 

三浦さん:クリスマスでゲームを手に入れたので、今はプリントを何枚したら、ゲームを何分できるというように設定しています。子どもたちはそのために頑張っていて、今のところルールに納得していますが、けっこう厳しめに設定しているので、いつか不満が出てくるかもしれません(笑)。

 

── ご自身の子育てで心がけていることはなんでしょう。

 

三浦さん:私の親がしてくれたように、楽しい入り口をたくさん探すようにしています。うちの子はカルタが好きなので、百人一首だったり、ことわざだったり、楽しくできて知識にもなるものをするのですが、ふたりとも負けず嫌いで、負けると泣いています。

 

歴史など、漫画で学習できるものも取り入れています。習い事はピアノをしていて、ピアノは昔からいいと言われていますが、実際やらせてみてやっぱりいいなと思います。難しそうに見えるものでも小分けにしたり、ゆっくり弾いたりすると、いつのまにかできるようになる過程が、ものごとの乗り越え方を経験しているように感じるんです。

 

── ピアノは練習につき添うのが大変だという話も…。

 

三浦さん:正直、そう思います(笑)。でも今、つき添って練習していれば、いつか自分でしてくれると思って。できないのではなく、してないだけ。何事もできるし、好きになれば楽しいと思わせてあげたいんです。でもそれには時間が必要で。なかなか親が働きながらだと難しいですよね。

 

三浦奈保子さん

── 時間との葛藤、わかります。

 

三浦さん:私も母のように読み聞かせをたくさんしたり、フラッシュカードをしたり、たくさん子どもに手をかけてあげたいのにできなくて、辛い時期がありました。夫も忙しくて週6日も家におらず、年子のきょうだいをひとりで育てている気分でした。

 

もっとのびのびと子育てをして、いろんなことをさせてあげたいのに、どうしても手が回らない日が多くて。理想と現実のギャップや罪悪感で、毎日ヘトヘト。「今日も何もできずに終わってしまった」と思う日が多くあって。

 

── 絵本の出版を手がけたのは、ご自身の実体験からだそうですね。

 

三浦さん:夫婦共働きで、人手も時間も限られているとなると、いかに効率的に楽しく子育てができるかにかかっていると思うようになりました。

 

子どもが小さいころ、めくると何かが出てくる絵本が大好きでした。動物も好きだったので、隠れているところから動物が出てくる仕かけ絵本なら小さい子どもを惹きつけると思いましたし、せっかくなら知育も組み合わせて自然と漢字を覚えられるようにしました。

 

── 小さい子向けの絵本に漢字が出てくると聞いて、正直驚きました。

 

三浦さん:実は、街のなかではひらがなよりも漢字のものが多いんです。「いぬ」も、ひらがなで書いてあることはほぼなくて。スーパーでも牛乳の「牛」を見つけられたら、きっと周りの方からすごく褒めてもらえると思うんです。「まだ小さいのにこれ読めるの?すごいね!」って。

 

そこからもっともっと知りたいと思う気持ちが生まれていったら良いなと思うんです。それに、ひらがなと比べて漢字はひとつでも意味がありますし、形にも特徴があるので、右脳が発達している幼児期はイメージとして捉えやすいそうです。

 

親も子どもから反応が返ってくるとやる気になりますよね。私は、子どもが小さい頃に自分の体力と時間との戦いでつらかったので、一緒に遊んでいるうちにママも子どもも褒められる…そんな笑顔の輪が広がったらいいなと思っています。

 

PROFILE 三浦奈保子さん

三浦奈保子さん

1987年生まれ。東大卒タレントとして「Qさま!!」や「ザ・タイムショック」、「潜在能力テスト」などのクイズ番組に出演。気象予報士やファイナンシャルプランナー(FP2級)の資格も持つ。現在は2児の母として育児に奮闘し、自らの育児経験をもとに制作した知育絵本「東大脳を育てる 1才から読む 漢字どうぶつマンション」が発売中。

取材・文/内橋明日香 写真提供/三浦奈保子