「みりんが宗教上使えない」「土鍋なんて持っていない」海外のユーザーから届く、日本の家庭料理を作ろうとするときの大きな壁。“それで作れないなんてもったいない”。会社を立ち上げて土鍋などの販売も始めた、元芸妓で3歳児のママ・MOEさんが目指す世界はワクワクに満ちていました。

 

動きがカワイすぎる!2歳の娘さん(当時)も登場したYouTubeの料理風景

「天かすがなければポテチで代用」とアドバイス

── 着物を着こなし、日常生活や家庭料理を紹介する動画が海外で人気のMOEさん。視聴者の反応はいかがでしょうか?

 

MOEさん:“寿司や天ぷら”といったふつうの家庭料理に、こんなに海外から反応があってびっくりしました。

 

YouTubeチャンネル「Kimono Mom」をはじめて3年たちましたが、毎日のように「紹介していた料理を作ってみたよ」というメッセージをいただきます。

 

日本食用の調味料や食材が手に入りづらい国も多いので、動画では手に入りやすい食材で代用するアイデアも紹介しています。

 

たとえば、たこ焼きを作るときに天かすがなければ、ポテトチップスをくだけばいいんですよ、みたいに。

 

視聴者同士がYouTubeのコメント欄で知恵を出し合っています。「練りごまが入手できない」の悩みに、「タヒーニというペーストで代用できるよ」とコメントが寄せられています。

 

庭で青空クッキングしながら、おもちの磯辺焼きを作る

── 代用のアイデアは大変助かりますね。視聴者から、こんな料理を作ってみたいというリクエストはありますか?

 

MOEさん:リクエストをもらって作ったことがあるのは、月見うどんや焼きとり丼。

 

アラスカ在住の人から「うどんを粉から作ってみたい」とメッセージをもらい、こねるところから見せたことも。

 

アニメやドラマで観た料理を作ってみたいと話す方もいます。いわゆる“アニメ飯”です。私はあまり作りませんが、ポケモンで観た“おにぎり”、NARUTOの好きな“ナルトラーメン”などですね。

 

── アニメやドラマの影響力は大きいですね。MOEさんの動画を見ながら、日本食を作った人たちと交流して感じたことは?

 

MOEさん:日本食を作りたい、でも、調理道具や材料がなくて思いどおりにいかないケースが多いことがわかりました。

 

「動画を見て日本食を作ったよ」と写真や動画を見せてくれるのですが、ご飯の炊き方が惜しかったり…。

 

そこで知り合い経由で日本貿易振興機構(JETRO)と相談し、2021年7月から調理道具や調味料を届けるためのオンラインストアを始めたんです。まずは、土鍋としゃもじ、まな板などから始めると好評で。

 

日本食を作りたい視聴者向けに土鍋、まな板、しゃもじをオンライン販売

── たしかに、炊飯器なしでご飯を炊くにはコツがいりますね。

 

MOEさん:調味料についてもニーズがありました。しょうゆは入手できても、みりんがないことが多いようです。

 

また、宗教上の理由でアルコールを含むみりんがNGな方も。そこで出汁をとらず、みりんを使わなくても簡単に味つけするには、希釈できる“めんつゆ”があったらいいのにと考えました。

 

ちょうどいま、茨城県の老舗しょうゆメーカーとめんつゆを共同開発しているところです。これが世界各地で手に入るようになれば、日本食作りがどんなにか楽になるでしょう。