家族が寝たあとの勉強時間は「至福」

── お子さんが小さいと自分だけの時間を確保するのは難しそうですが、いつ勉強していたのですか。

 

知花さん:保育園に通い出してからは日中に。夕方、お迎えに行ったあとからは家族の時間にしていたので、いったん勉強はストップしていました。資格試験の前は娘たちの寝かしつけで一緒に少し寝て仮眠をとってから起きて、みんなが寝ているときに勉強していました。

 

知花くららさん
娘からの熱いチュ〜!に思わず笑みが溢れる知花さん

アラームをかけるときもありましたけど、「今日はこれをしなきゃ」と常に思っていたので、きっと脳が覚醒していたんでしょうね。わりとすぐ取りかかることができました。ときどき、気持ちがオフになってしまった日は、まず熱いシャワーを浴びてから勉強していましたね。

 

── 血の滲むような努力が…!

 

知花さん:本当ですね(笑)。正直、戻りたくないです。でもみんなが寝ている夜中は、心おきなく勉強できるので、実は至福の時間だったんです。独身のころってぜいたくだったんだなって今なら思います。自分のために1日のすべての時間を使えるんですから。

 

── 通学の時間はどうやって確保していたんですか。

 

知花さん:建築学科のデザインコースで学んでいたのですが、論文など、座学でできる単位は通信でまかなって、実技で模型を作るような、技術的なものは土日に通学していました。

 

でも土日は保育園もお休みなので、子どものめんどうを見てもらうのに、夫や義理の母、姉の力を借りていました。ピンチのときは私の両親も沖縄から来てもらっていたこともあるんです。本当に、家族のサポートに助けられました。

 

── ご両親は、お孫さんに会えて嬉しかったのではないでしょうか。

 

知花さん:そう言われてみたらそうなのかも…。振り返ってみれば娘たちとの時間を楽しんでくれていたように思います。でも、私からしたら自分の学びのために家族に迷惑をかけてしまって申し訳ないという気持ちのほうが大きくて。課題の締め切りが近いときや試験前は特に負担をかけてしまったと思います。

 

── 産休・育休中の学び直し(リスキリング)を国が支援すると発表して、働く世代を中心にさまざまな声が聞かれますが、実体験としてはいかがですか。

 

知花さん:最近それについて聞かれることも多いのですが、大変は大変です。でも、学びにも種類があるので、人それぞれのペースですることもできるとは思います。

 

ただ、本人にも家族にも負担はそれなりにあって、私自身は産後の不安定な体やメンタルの状態で、試験などのプレッシャーを感じながら勉強に取り組んでいましたし、家族のサポートがあってこそ実現できました。サポート体制も個人差がありますよね。

 

みんなに負担をかけている分、最短で卒業して、最短で試験に合格することしか頭になかったので、自分を追い込むことも。産後2週間で授業に出たときに先生が「子どもを産んだばかりなんだし、休んだら」と労ってくださったんです。

 

でも「今はアクセルを踏まなきゃならないときなので、踏みます」と言って受けました。取らなければならない授業がたまたまその日にあっただけなんですけど(笑)。

 

でも、振り返ってみても勉強したことはすごく良かったですし、二級建築士にも合格できて本当にホッとしています。ここからは学んだことをしっかり活かしていきたいと思っています。

 

PROFILE 知花くららさん

知花くららさん

1982年生まれ、沖縄県出身。上智大学卒。ファッション誌・TV・ラジオ・CMなどで活躍。2006年ミス・ユニバース世界大会準グランプリ受賞。元国連世界食糧計画(WFP)日本親善大使で、2022年まで約15年活動。2021年京都芸術大学建築学科卒業、2022年二級建築士試験に合格。2児の母。

取材・文/内橋明日香 写真提供/知花くらら