岸壁幼魚採集家として、海で出会える生き物の魅力を発信している鈴木香里武さん。母親のすずきかなこさんは、NHKの幼児向け番組「おかあさんといっしょ」や「いないいないばあっ!」に登場する歌の作詞を手がけています。自身の子育て経験が活きていると話す作詞活動や、15歳で息子さんが突然「金髪にしたい」と話したエピソードについて伺いました。
ラジオのアシスタントから作詞家へ
── 息子の香里武(かりぶ)さんのお名前は、明石家さんまさんがつけたそうですね。
すずきさん:もともと、私はラジオのアシスタントをしていて、明石家さんまさんや生島ヒロシさん、タモリさんなどとご一緒させていただいていました。
さんまさんと番組をご一緒させていただいたときに夫と結婚して、番組でも結婚を発表してくださいました。夫婦で海が好きなので、「子どもの名前は、海にちなんだものにしたくて、カイトくんとかいろいろ考えているんです」と話したら「カリブでええやん!」って。
私たちは新婚旅行でメキシコのカリブ海に行ったのでそう言ってくださったんですけど、「もうちょっと人につける名前にしてください(笑)」なんて最初は言ったんです。でも不思議なことに、だんだんしっくりくるようになって。漢字は画数なども考えてつけましたが、息子の名づけの親は、さんまさんなんです。
息子が「踊る!さんま御殿!!」に呼んでいただいたときに、そのエピソードをさんまさんがお話ししてくださったのを機に解禁したのですが、それまで名づけについては「親がロマンを込めて…」と話していました。でも息子は事実を知って喜んでいましたし、大好きな名前のようです。
── すずきさんはその後、作詞家に転身されたそうですね。
すずきさん:作詞は、息子がお腹にいるときにも書いていました。最後の1行を書いて、出産を迎えて。さんまさんがラジオ番組で私のコーナーを作ってくれて、そこで作詞をしたり文章を書いたりする機会があったのがきっかけです。何かをダジャレ混じりに言うとすぐ「退場!」なんて言われていましたが(笑)。懐かしいです。
── 20年ほど前からNHKの幼児向け番組「おかあさんといっしょ」や「いないいないばあっ!」の曲の作詞も手がけていますが、子ども向けの作詞をするようになったのはどうしてですか。
すずきさん:息子が3歳ごろから「おかあさんといっしょ」が大好きになって、子どもの歌の楽しさに気づきました。それまで70〜80年代のロックが好きだったんです。
毎日息子と一緒に番組を観るようになって、そこで歌われている曲がかっこいいなと思い始めて。子どもにも媚びすぎていないし、記憶にも残る。そこから子ども向けの歌詞を書き始めました。子どもと過ごすなかで楽しさを感じることや、私自身も子育てには悩みが多くて苦労したので、頑張っているお母さんたちに寄り添って、育児が楽になるような詩を書きたいと思っています。
「いないいないばあっ!」で登場する「ワンツー!パンツー!」は、トイレトレーニングが大変だった当時を振り返って、こんな歌があったらいいなと思って書きました。
もともとは「こんなパンツ、履きたいね」という歌だったんですが、ディレクターさんからのアドバイスもあって、そこまで押しつけるのではなく、いろんなパンツを紹介して、子どもたちが自然と自分から履いてみたいと思える歌詞にしました。
育児がうまくいかないとき、子どももイヤイヤ期でお母さんもつらいし、どう言葉かけをしたらいいか悩みますよね。「だいじょうぶんぶん」はそんなときに頑張ったことを褒めてあげて、子どももお母さんも「だいじょうぶ」とホッとしてくれたらいいなと願って書きました。子育てを経験していなかったら子ども向けの歌詞を書くことはなかったと思います。