「古着の無人販売」で大学生が起業。山本菜々子さんが始めたビジネスは珍しさもあって、フジテレビなどのメディアで取り上げられるようになりました。テックを使った効率的なビジネスの根底には、アナログなふたつの思いがあるようです。

 

オシャレな古着が並ぶ店内の様子を公開

動物保護支援のために起業を思いつく

── 古着の無人販売ビジネスを立ち上げた経緯について教えてください。

 

山本さん:きっかけは動物保護をなんとかしたく、自分でそのためのお金を作りたいと思ったからです。

 

もともと動物が好きで、少しずつ動物保護に関心を持つようになりました。ひとり暮らしなので自分では保護できないし、寄付など多額な支援ができるわけではなくて…。

 

自分のできる範囲でバイト代から少しずつお金を出したり、インスタで動保護を広めようとリポスト活動をするくらい。

 

コロナ禍でバイトの出勤が制限されて金銭面で支援することが難しくなり、そんなときに思いついたのが、自分の好きな古着を販売するビジネスで支援すること。

 

── なぜ古着販売で動物保護の支援をしようと思ったのですが?

 

山本さん:何かビジネスを始めるとしても、予算に限りがあります。少ない元手で始められて、好きなことで売上をあげて動物保護に回せたらと思いました。

 

古着は趣味で100着以上持っていたし、お店を回るのも好き。何かビジネスを始めるなら、関心があるものがいいなって。

 

基本的に自分の利益はなくていいんです。利益は動物保護に回そうと決めました。それでいいと思っています。

 

── 2021年の8月29日に立ち上げたそうですが、どういった流れで事業を進められていますか?

 

山本さん:起業のアイデアを思いついたのは6月末です。なんかこう、勝手に焦っていましたね(笑)。

 

大学3年生で時間があったけれど、卒業するためのテストや就活もあって忙しくなる。コロナ禍が明けたら授業日数も増える…と思ったら、いましかないかなって。

 

それに夏のほうが元手をなるべくかけずに利益が上がるんじゃないかとも思いました。Tシャツなどの夏服は仕入れやすいから。

 

“夏のうちにやらなきゃヤバいんじゃないの?”と。それから、すぐに古着屋さんをスタートさせようと。

 

翌月がテスト期間だったので、その間にやろうとしていることをもう一度整理しようと、8月には実家のある長崎に帰りました。

 

4回くらい地元の長崎と大学のある千葉を行ったり来たりしながら「学業と並行して進めていけるお店にするにはどうすれば?」と考えたときに思いついたのが、“無人の販売店”です。

 

イベントの告知をするために長崎ラジオに出演

── たしかに無人販売なら、勉強をおろそかにしないでビジネスも並行してできますよね。でも、知識もないなかでどうやって始めたんですか?

 

山本さん:地元の長崎でお店をもとうと思いました。場所代も高くないし、何か問題が起きたら、最悪、現地の知り合いに助けてもらえるので。

 

無人販売なので、盗難に合わないようカメラを4台設置しました。監視カメラとスマートフォンと連携して、随時監視できる体制にしています。

 

カメラもネット通販で口コミを見て評判がいいものを絞って、価格帯も手の届く範囲のものを調べて自分で購入しました。設置は友人のつてで電気回りが得意な人を頼ってお願いしました。

 

── 無人で販売するためのセキュリティ面、そのほかに苦労した点などはありますか?

   

山本さん:決済方法は現金のみで店内には精算機があります。かなりの重量で動かすのはムリなので、盗まれる可能性はないと思いますね。

 

コンセントを抜いたら警報が鳴るシステムも導入していますし、店内で張り紙をしてお客さんにわかるよう注意喚起もしました。

 

夜間は自動でシャッターが閉まるため、これまでのところ被害はありません。